大阪は東京よりコロナの打撃大きい? 吉村知事が示唆する地域事情
オミクロン株による新型コロナウイルス第6波で、しばしば「大阪問題」が取り上げられている。大阪府は、人口当たりの感染者数や死亡者がいずれも全国トップなのだ。死者率は全国平均の約2倍だという。なぜ大阪は、コロナに弱いのか。
東京の6割の人口なのに
「大阪府は以前から、新型コロナによる、人口あたりの死亡者数が多いことが指摘されています。2月14日の時点で、大阪府の死亡者数は全国の都道府県中、最多の3375人。東京都(第2位)の3310人を上回っています。大阪の人口が東京の6割程度しかないことを考えるとこの死亡者の多さは異様です」
「札幌医科大学のウェブサイトで、人口100万人あたりの死者数(流行開始からの累積です)を見ると、大阪府は370.9人で2位の北海道の298.6人を大きく引き離してのトップです。5位の東京都(235.6人)と比べて約1.6倍、全国平均(156.4人)と比べれば、なんと2倍以上です」(毎日新聞、2月21日)
朝日新聞も22日、「オミクロン猛威の大阪 致死率は全国並みなのに死者数突出のわけは?」という記事を掲載している。
NHKも18日、同じ問題を取り上げている。見出しでは、「新型コロナ 死者数多い大阪 高齢者感染 入院できず施設で」と一歩踏み込んでいる。
大阪で死者が増えていることについて、ニュースの中で、感染症に詳しい関西福祉大学の勝田吉彰教授は、重症化のリスクが高い高齢者に感染が広がっていることや、医療提供体制がひっ迫していることなど、複数の要因が影響していると指摘している。
高齢者については、「東京と比べて大阪は高齢者と同居する世帯が多いというデータもあり、家庭内で若い人から高齢者に感染が広がりやすい状況にある。加えて高齢者施設でのクラスターが相次いでいることも影響しているとみられる」と説明。
また、医療提供体制については、大阪府内で軽症・中等症の病床がひっ迫していることをあげて、「入院ができないために、肺炎の症状があり、酸素の値が低い高齢者が自宅での療養を余儀なくされて治療の遅れを招くと重症者や死亡者の増加につながってしまいかねない」と語っている。
市内に1000か所の高齢者施設
地元の読売テレビは19日、「あさパラS」で、大阪は新規感染者数で東京を下回ることが多いにもかかわらず、第6波の死者数が全国最多であることを取り上げた。デイリースポーツによると、生出演した吉村洋文知事は、専門家にも明確な理由がわかっていないとしながらも、一つの説を紹介した。
「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近いんじゃないかとおっしゃる方もいらっしゃいます。職場もそうだし、生活もそうだし。もともと大阪って狭い所に高齢者の施設もたくさんありますし。大阪市内だけでも1000か所の居住系の高齢者の施設があったりして。非常に生活圏が近い。だから若い人に広がると高齢者にも広がりやすいというのはあると思う」
先の朝日新聞記事によると、死者の多さについてたびたび質問を受ける吉村洋文知事は、「致死率、割合でいくと、大阪は現時点においては、都道府県でいうと真ん中ぐらい」と21日の記者会見でも強調した。人口当たりの死者は多いが、感染者に対する致死率は全国平均なみ、府内の感染者だからといって亡くなるリスクが特別高くはないというわけだ。
同紙の集計でも、府内の第6波の致死率は0.13%で、全国平均の0.11%とほぼ変わらない。一方で、感染した人は多いため、致死率は高くなくても、亡くなる人の数が多くなっている、と同紙は分析している。
第6波の間での人口10万人あたりの感染者数でみれば、大阪府が全国最多の3956人で、全国平均1999人のほぼ2倍。東京都の3459人も上回る。
同紙によると、大阪の3世代同居率は2.5%。全国平均の5.1%よりは低いものの東京の1.8%よりは高い。
重症になる前に容体悪化
大阪府は第6波の死者を2月17日時点でまとめている。それによると、445人の死者のうち194人が施設・医療機関関連だった。また感染経路が不明とされている214人のなかにも、院内・施設内感染の可能性がある者や濃厚接触者が含まれている、と報告。死者の「約半数は施設関連」としている。
同じ報告では、大阪では「重症からの死亡者」は27人(6.3%)に過ぎない。死者の9割以上は、重症と認定される前に亡くなっている。高齢者は急速に容体が悪化するケースが多いことによると見られる。国立感染症研究所感染症疫学センターは、オミクロン株の場合、感染から5日で亡くなるケースが最も多い、と分析している。
大阪では、高齢者施設や高齢者対策を強化し、できる限り高齢者に感染させないようにすること、感染した高齢者は最優先で治療を受けられるようにすることが求められているといえそうだ。