オミクロン株はAIすら想定しきれず 予想大きく上回るペースで感染爆発
オミクロン株により新型コロナウイルスの拡大に、いちだんと拍車がかかっている。全国の感染者数はこのところ連日、過去最多を更新、感染症の専門家やAI(人工知能)の予測を上回るハイペースとなっている。
欧州では、すでに過去のピーク時の数倍の感染者が出ている国も少なくない。日本もこれまでの予想をはるかに上回る感染者が出てくる場合を想定し、備えを強化した方がよさそうだ。
2月に増えるはずだったが・・・
国内の感染者数は2022年1月18日、3万2000人を突破。過去の最高記録を一気に6000人以上も上回った。19日にはさらに増えて4万1000人超に。感染者の増加スピードは、大方の予想をはるかに上回っている。
FNNは1月4日、「今後の感染状況はどうなっていくのか」と専門家に聞いている。国際医療福祉大学の松本哲哉主任教授は「2月中に感染者が一気に増え、3万人を超える可能性もある」と語っていた。東京歯科大学の寺嶋毅教授は「1月末、新規感染者数は急上昇していって、2月下旬ごろには、第5波と同じ程度の、1日あたり全国の新規感染者が2万5000人前後になる可能性がある」との見立てだった。
この段階では、沖縄の感染者は200人ほど、東京も100人程度だった。したがって両教授の予想人数は、当時としてはかなり際立ったものだったが、実際には、この予想よりも速いピッチで感染拡大が進んでいる。
NHKは13日、名古屋工業大学の平田晃正教授のグループによる「AI予想」を紹介している。人流のデータや過去の感染状況、それに、当時報告されていたオミクロン株の感染力やワクチンの効果に対する影響などのデータをAIに入力し、今後の東京都内での新型コロナウイルスの感染の広がりを予測したものだ。「1月末には1日当たりの感染者数が3000人を超えるおそれがある」という計算結果だった。実際には東京はAIの予想を上回り、19日に7000人を超えてしまった。
フランスでは1日で46万人
海外では、南アフリカや英国、ニューヨークなどではピークを過ぎたとも言われるものの、依然として過去最多の感染者数を更新し続けている国が少なくない。
NHKのコロナウイルスサイトによると、仏の新規感染者は連日30万人を超え、18日は46万人。イタリアは20万人を突破。スペインも30万人を超える日が目立つ。これらの国々はいずれも過去のピーク時の数倍の感染者となり、一定数の死者も出ている。
朝日新聞によると、福岡県の新型コロナウイルスの感染者に関して14日、長崎大の有吉紅也教授(臨床感染症学)らが「今すぐに人と人との接触を大幅に減らす対策をとらないと過去のピークの10倍超まで増えてしまう」とする解析結果を発表している。「オミクロン株の感染力は異次元の強さ。これまで以上に対策の遅れによる影響が大きい。今までの基準で判断していたら手遅れになる」と、危機感を募らせていた。
「軽症の病気」ではない
このところの感染者の急増ぶりや、増え方の速さを考えると、日本でも感染者数が過去のピーク時の数倍に増えることも視野に入れておく必要がありそうだ。感染者の急増で、病床のひっ迫前に、保健所の業務がパンクし、他部所からの応援でしのいでいる自治体も出始めている。
世界保健機関(WHO)はすでに11日、今後6~8週間で欧州の人口の半分以上が新型コロナウイルスのオミクロン変異株に感染する恐れがあるとの見通しを示している。
BBCによると、テドロス事務局長は18日、「パンデミックの終息にはほど遠い」と語り、オミクロン株は平均すると重症度が低いかもしれないが、「軽症の病気だとの見方は判断を誤らせる」と主張。「誤解してはいけない。オミクロンは入院患者と死者を出しており、病院は軽症の患者であふれている」と改めて各国に警戒を呼び掛けた。