日本のワクチン「3回目」接種は遅い オミクロンに間に合わなくなる
日本でも新型コロナウイルスのオミクロン株による市中感染が広がりつつある。対策の切り札になるとされているのは、3回目のワクチン接種(ブースター)だ。すでに医療従事者などへの接種が始まっているものの、一般の国民に順番が回ってくるのはかなり先になりそうだ。なぜ遅れているのか。
「自治体間の平等はかる」判断は問題
この問題については2021年12月1日、TBSの番組に出演した新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバー、小林慶一郎・慶応大学経済学部教授が極めて分かりやすく解説している。
それによると、一つは「どちらかというと政府の中の対応がのんびりしていた」。二つめは、「供給量が年内は足りないだろう」と考えられていた。これは「8か月間隔での接種」ということを前提に製薬会社と交渉していたことによる。したがって、年内に高齢者施設や医療従事者には接種できるが、一般の高齢者までは対応しきれない、と思われていた。
さらに、自治体間で準備状況に差があった。平等にしようとすると、準備ができてないところに合わせて遅いタイミングやることになる、というわけだ。
小林氏は、「国民の命をリスクにさらしながら自治体の間の平等をはかる」「これは極めて問題のある判断」「とても許される判断ではない」と語っていた。
首相が「前倒し」
オミクロン株の世界的な急拡大を受けて、岸田文雄首相は17日、これまでよりも踏み込んだ「包括強化策」を発表した。
時事通信によると、予防と検査、早期治療の3本柱。3回目のワクチン接種は2回目から8か月以上だった間隔を、医療従事者や高齢者施設の入所者らは6か月に、来年2月以降に予定されていた一般の高齢者は7か月に前倒しする。
対象者は計3145万人。飲み薬の医療機関への提供や、ワクチン未接種の人が全都道府県で予約なしに受けられる無料検査を今月中に始める方針も示した。
首相は官邸で記者団に、オミクロン株の感染拡大への懸念があるとして「ワクチンの効果が比較的早く低下し、重症化リスクが高い高齢者を優先して前倒しを集中させると判断した」と説明。供給量の制約から、全ての対象者の間隔を一律に短縮できないことに理解を求めた。
NHKによると、後藤茂之厚生労働相は28日、閣議の後の記者会見で「一般の高齢者は、施設入所者などに一定の完了が見込まれた段階で、来年2月を待たずに、前倒しで接種を行って差し支えない」と述べ、医療従事者や高齢者施設の入所者などの接種が終わる見込みが立った自治体では、一般の高齢者のさらなる前倒しも認める方針を示した。
イスラエルは4回目接種
ANNのまとめによると、12月27日は全国で新たに12人のオミクロン株感染が確認された。富山、広島、滋賀、静岡県でも初めて感染者を確認。このほか東京都内では新たに60代と10代の男性2人がオミクロン株に感染していることが確認された。2人はそれぞれ帰国の際に濃厚接触者となっていた。
朝日新聞の集計によると、オミクロン株の感染者は27日19時半現在で、少なくとも全国の17都府県で確認されている。総数は200人を超えている。海外渡航歴がなく、感染経路も不明の市中感染は同日までに、東京、大阪、京都、福岡、愛知に広島と富山県を加えた計7都府県で確認されている。
現在のところ、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカなどのワクチンを3回目接種した場合、かなりの確率でオミクロン株の感染を防ぐとされているが、100%ではない。厚生労働省によると、日本の空港検疫で感染が見つかった海外からの帰国者の中には、3回目の接種を済ませた人もいたことが判明している。
TBSによると、イスラエルでは4回目のワクチン接種が27日から試験的に始まっている。医療関係者150人が対象で、世界初の試みだという。