オミクロン株とうとう市中感染 海外では「それほど深刻でない」報告も
新型コロナウイルスのオミクロン株による市中感染が2021年12月22日、国内では初めて大阪府内で3人が確認された。23日には大阪でさらに1人、京都でも1人。海外の先行事例などから、日本でもオミクロン株が急拡大し、「コロナ第6波」が懸念される事態となった。
一方で、オミクロン株や対策については、海外から「条件付きのいい知らせ」も届くようになっている。
勤務先の小学校は臨時休校
大阪府によると、22日にオミクロン株に感染していることがわかったのは、府内在住の30代の両親と10歳未満の女児の親子3人。海外渡航歴がなく、感染経路も不明。このため国内では初の市中感染と発表された。
読売新聞によると、夫は大阪府寝屋川市内の小学校の教員。同校は臨時休校。教職員や通学児童全員の検査を実施している。3人はいずれも軽症で現在は入院している。夫婦には他にも2人の子どもがおり、2人ともコロナ陽性が確認されているが、オミクロン株感染かどうかは解析中という。
さらに23日に大阪府内で、別の小学生男児の感染も確認された。京都府内でも、20代の女性1人。海外渡航歴がなく感染経路が不明で、市中感染だという。京都新聞によると、症状は軽症。12月19日に発熱や頭痛があり、20日に陽性が判明、入院したという。現在はせきやたんが出る程度。
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は23日、記者会見で、「国内ではオミクロン株が面的に広がっているとは考えていないが、複数のスポットですでに感染が始まっていると考えられる」と語った。
濃厚接触者を収容できない
こうした中で関係自治体が頭を痛めているのが、濃厚接触者への対応だ。24日の毎日新聞が詳しく報じている。
それによると、濃厚接触者は厚生労働省の調べで、23日時点で7819人。前日から一気に約3500人も増えた。
政府はオミクロン株感染者の濃厚接触者について、自宅ではなく原則、自治体が確保する宿泊施設で待機するよう求めている。
従来のコロナ感染者では、航空機の座席の前後2列を含む計5列の乗客のみを濃厚接触者としてきたが、感染力の強いオミクロン株については、感染者と同乗していた乗客は全員が濃厚接触者。そのため人数が加速度的に増えている。
神奈川県では濃厚接触者が22日に初めて1000人を超えた。東京都は23日時点で、18の宿泊施設で計4040室を確保している。ここでデルタ株の感染者らも受け入れている。22日時点での都内のオミクロン株の濃厚接触者の総数は1490人。
千葉県では、熊谷俊人知事が23日の定例記者会見で、「濃厚接触者が積み上がっていくと、全力を尽くしたとしても対応しきれなくなる。疫学的な知見に基づいて、濃厚接触者の範囲や期間を見直してほしい」と政府に求めたという。
南アはピークを過ぎた?
一方で、海外からは、オミクロン株に関する明るさのある新情報も刻々と入ってきている。
ロイターによると、南アフリカの国立伝染病研究所(NICD)の科学者は、国内でオミクロン変異株が最初に検出されたハウテン州で、1日当たりの感染者の減少と検査での陽性率低下が確認されたとし、感染が約1か月でピークを迎えたもようだという認識を示した。
さらに、詳しいデータが必要としつつも、入院者や死者が過去の感染の波ほど増加しておらず、重症化リスクが限定的な可能性があるとした。これらの「ポジティブな情報」をもとに、NICDのシェリル・コーエン教授は「南アフリカでは疫学的に見て、オミクロン株はそれほど深刻ではない様子を示している」との見方を示した。
また、英インペリアル・カレッジが行った研究によると、新型コロナウイルスのオミクロン変異株への感染で入院するリスクはデルタ株への感染と比べて40~50%低いことが分かった。研究結果は22日に公表された。
「全般的に、オミクロン株への感染はデルタ株感染よりも比較的入院リスクが低いことが確認された」とし、同カレッジのニール・ファーガソン教授は、「いくぶんかは、明らかにいい知らせだといえる」と語った。
しかしながら、世界保健機関(WHO)技術責任者のマリア・バンケルコフ氏はオミクロン変異株について、確固とした結論を下すのに十分なデータはまだ得られていないと指摘。データはまだ「混乱している」と述べている。
ファイザーの経口薬に緊急使用許可
日本に入国時にオミクロン株感染が見つかった人は22日までに約160人。TBSは同株に感染した可能性のある、日本に永住権を持つ外国籍の男性に取材している。それによると、この男性は空港での検査は陰性だったが、同じ飛行機の同乗者にオミクロン株の感染者が出た。その後の検査で男性も陽性が判明。オミクロン株の可能性が極めて高く、すでに関東地方の医療機関に入院中だという。
「熱があります。体温は38度から40度の間です。呼吸は苦しくありません。楽になったとは言えません。体の痛みがとにかくすごいです。あと数日はかかると思います」と語っている。
治療面の明るいニュースとしては、ファイザーのコロナ経口薬がある。米ブルームバーグによると、米食品医薬品局(FDA)は22日、ファイザー製の新型コロナウイルス感染症経口薬「パクスロビド」の緊急使用許可を出したと発表した。自宅療養の新型コロナ患者の治療薬として初めてFDAの承認を受けた。大規模な臨床試験ではパクスロビドをワクチン未接種のハイリスク患者に発症後5日以内に投与したところ入院が88%減少した。
FDA医薬品評価センターのパトリツィア・カバゾーニ氏は発表文で、「今回の緊急使用許可は、新たな変異株が出現しているパンデミックの重要な時期にコロナと闘う新たなツールを提供するものだ」と説明している。
こうした状況を受けて24日朝の日経電子版は、「NYダウ3日続伸196ドル高 オミクロン型への懸念後退」と報じている。