「抗体カクテル療法」1回31万円 ワクチンはいくら?今は公費負担だけど

   新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の価格が次第に明らかになっている。ワクチンは米ドルで20~30ドル、このところ注目されている「抗体カクテル療法」は1回31万円もかかるようだ。いずれも公費負担となっているため、自己負担はない。

新薬や新ワクチンの開発には多額のコストがかかる
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製薬会社に大きな利益

   ワクチンについては、「ワクチン市場規模、最大8兆円に 日本の契約金額は非公表」という朝日新聞(2021年6月24日)の記事が詳しい。

   同紙は「日本政府はワクチンの契約金額は明らかにしていない」としつつ、米国の医療情報提供会社IQVIAの調査結果を引用。米ファイザー製20ドル、米モデルナ製30ドル、英アストラゼネカ製8ドルだと報じている。ロイターも7月にファイザーワクチンは接種1回分が19.5ドルと報じている。

   日本で16歳以上の8割が今年度中に接種すると考えた場合、21年度のワクチンコストは最大約3000億円になり、世界全体で今年のコロナワクチンの市場規模は、最大約750億ドル(約8兆円)になるとIQVIAは推計しているという。

   昨年、世界で売り上げが最も多かった薬の領域は抗がん剤で約17兆円。2位は糖尿病治療薬で約12兆円だった。コロナワクチンは、それに次ぐ規模の売り上げとなり、同紙は「ワクチンの開発に成功した一部の製薬会社は大きな利益を得ている」と書いている。

菅前首相が明かす

   治療法では「抗体カクテル療法」が注目されている。中外製薬の点滴薬「ロナプリーブ」を重症化リスクのある軽症・中等症患者に1回投与する。その価格をオープンにしたのは菅義偉・前首相だ。毎日新聞によると、2021年10月12日、菅前首相はインターネット番組で「ロナブリーナ」の価格などについて語った。

   「実は1回31万円なんですよ。非常に高価だがよく効く」と述べるとともに、当初は20万回分の調達を予定していたが「買えるだけ買え」と指示。計50万回分に増やしたという。発言に基づけば、ロナプリーブの調達費は単純計算で1550億円となると同紙。

   厚生労働省によると、中外製薬との契約では、購入価格や数量は明らかにしない秘密保持の条項が含まれている。厚労省幹部は同紙に、菅氏の発言について、「秘密保持の対象で、価格、量ともにノーコメント」と語っている。

全て国が負担

   これまでも「抗体カクテル療法」については、「きわめて高価」「一回10万円以上」などといわれていた。このため、「軽症患者全てに使うことはありえない」という指摘が医療関係者から出ていたが、今回の菅前首相による価格公表は、そうした懸念を裏打ちすることになった。

   新薬や新ワクチンの開発には多額のコストがかかる。したがって、価格自体は不当に高いものではないと見られている。

   ワクチンについては、このほか接種1回ごとの医師らに原則2070円の対価が支払われている。ワクチン代も接種費用も、「抗体カクテル療法」もすべて国の負担。国は今後、国産ワクチンや治療薬の開発支援を強化するとしており、コロナ禍は国家財政にとって重い支出となっている。

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