福島復興について知る「対話フォーラム」 課題伝えるため環境省の取り組みは
2011年の東日本大震災と福島第1原発事故から10年。福島県の復興作業はさまざまな課題を抱えている。国の取り決めで除染された廃棄物や土壌は2045年までに県外で最終処分することになっている。半面、環境省の2020年のウェブ調査によると、最終処分については福島県外の人は51.2%が「聞いたことがなかった」と回答した。
「聞いたことがあるが内容は全く知らなかった(29.7%)」との回答を含めると計80.9%。約8割が除染土壌の県外での処分について知らない状況だ。国民の理解を促進するため、同省は「『福島、その先の環境へ。』対話フォーラム」を実施している。現在の取り組みについて、省の参事官に取材した。
フォーラムは5月にも開催
福島県内除染土壌の最終処分量の減容や再生利用をめぐる必要性・安全性などに関して理解の促進を図る「対話フォーラム」は2021年5月23日にも実施。今回は第2弾として9月11日に開催され、小泉進次郎環境大臣や有識者が登壇した。
本来は大阪府で現地開催する予定だったが、新型コロナウイルス禍の影響を受けオンラインで配信した。全国的な理解醸成のため、大阪府出身のタレント・岡田結実さんや京都府出身で京都府立大学に通う学生と、関西地方の関係者も参加した。
フォーラムは一般人からオンラインで寄せられた質問や意見などについて、参加者で共に考え話し合う意見交換の場。今回は県外の方より「福島の復興に向けて、何か協力できることはないですか」など、復興への理解に対して意欲的な意見もあった。
J-CASTトレンドは環境省・環境再生事業担当参事官の川又孝太郎氏に取材した。今回のフォーラムで、環境再生事業や今後の課題をフォーラムで説明した人物だ。
「もっと多くの方に(復興の課題を)知っていただかない限り、県外最終処分に至る道筋もかなわないと考えています」と川又氏。復興の現状や課題について全国での関心を高めるため、各地での対話フォーラム開催を企画したという。本来は現地・対面で開催し、一般参加者とは双方向でやりとりするのが理想だが、上述通りコロナ禍を受けオンラインで配信した。
3つの広報活動を中心に理解醸成図る
2045年に最終処分が完了するまであと約24年。理解醸成のため、環境省では主に3つの広報活動を行っている。1つ目は説明のための「コンテンツ作り」。例えば、福島県の現状や課題についてわかりやすくまとめた動画を制作している。環境省サイト上で公開されており、今回のフォーラム冒頭でも流された。
2つ目は今回も行われた対話フォーラムだ。
3つ目は「大学での理解醸成活動」。環境省と提携する大学約15校で、福島県の復興や課題に関する講義が行われている。また講義のみならず、学生同士で議論を行う「ワークショップ」も実施。今後は再生土壌の実証事業といった現地見学会も計画している。
大学での講義はもちろん、今回の対話フォーラムでいわゆる「Z世代」の登壇者も参加したように、若い世代への醸成活動にも力を入れている。
また、環境省では、放射線の健康影響に関する情報を正確に読み解くや判断力を身につける場を創出する「ぐぐるプロジェクト」という事業を21年7月から実施しているという。両親の被ばくが子孫の健康にも影響を及ぼすという誤った知識や風評を払拭するためだ。
川又氏によると「ぐぐるプロジェクト」の一環で、正しい知識を学べるセミナー「ラジエーションカレッジ」を開催予定で、現在参加者を募集している。同氏が取り組んでいる大学での理解醸成活動でも「ラジエーションカレッジ」と連携しつつ、復興の課題や放射線について「学んでいける大学をもっと増やしていければ」と考えている。
対話フォーラムのプロジェクトはまだ開始されたばかり。これまでの活動を通しての広報効果を聞くと、川又氏は「全体でいうと、まだまだこれから」と明かす。ただ、今回の対話フォーラムには一定の手ごたえがあったようだ。
「今回は『何か協力できることはないか』『ミニフォーラムを開きたい』『長泥の実証事業やボランティアには参加できるのでしょうか』など、課題活動に向けて自分が何をできるか考えていただいたとわかる(一般参加者からの)コメントがいくつも見られました。すごくうれしいことですし、このフォーラムを行ったかいがありました」
見学会や対話フォーラム、そして大学での講義を通して、問題について「知るきっかけ」を提供することが重要だと川又氏は考えている。今回のフォーラムに一般参加者から寄せられた積極的なコメントを振り返って、
「こうした活動を実施する意義があるのだと再確認できました」
と語った。