コロナ「無症状者」増加が示すリスク ワクチン2回接種後でも感染広げる恐れ
新型コロナウイルスの「隠れ感染」が改めて問題になっている。全国的に感染者数が大きく減少しているが、実は無症状の感染者が多数潜在しているというのだ。こうした無症状者が、周囲に感染を広げるケースも指摘されており、なお警戒が必要だ。
7月上旬の12倍
日経新聞は2021年9月16日の朝刊で、「『隠れ感染』市中で増加」という大きな記事を掲載した。新型コロナウイルスの感染に気づかず、社会生活を送る「隠れ陽性」が増えているというのだ。
東京都は、無症状者を対象に、人流が多い繁華街や飲食店、駅前などでPCR検査をしている。都内の感染者数は減っているが、このモニタリング調査の直近の数値はいまだに7月上旬の12倍。「多数の感染者が潜在している可能性」は、9月9日に開かれたとのモニタリング会議で、専門家からも指摘されたという。
行政検査が追いつかず、民間検査の活用も進んでいないことが背景にあり、経済の正常化に向け、検査体制の拡充とワクチン接種を両輪で進めることが求められる、と同紙は指摘している。
東京新聞も8月27日、「感染気付かず出歩く人が急増」と報じている。
都のモニタリング検査によると、7月第1週の感染者数の割合は0.05%で、検査したおよそ1992人に1人が感染している計算だった。翌週から0.09%、0.15%と割合は上昇し、8月の第3週では0.89%となった。検査したおよそ113人に1人が感染している計算だという。
3割はウイルスを大量に持つ人
新型コロナウイルスについては、「潜在感染者」が多数存在している、ということが以前からたびたび指摘されてきた。日本だけでなく海外でも同様だ。
アジアの情報サイト「NNA ASIA」によると、香港では2020年4月21日~21年4月18日までの間に「隠れ感染」が約2万人いたと推定されている。記事の中で、中文大医学部の陳基湘教授(微生物学科)は、感染が確認された人と隠れた感染者の比率は、香港では約1:2と説明している。
こうした「潜在感染者」は、無自覚のうちに感染を拡大させている可能性がある。日本ではすでに東京都世田谷区の調査で、「潜在感染者」の3割は、ウイルスを大量に持つ人だったことが分かっている。ウイルスを大量に持つ人ほど、周囲への感染力が強いとされている。
先の日経新聞によると、9月1~3日の間に全国の新規感染者は約4万2000人。そのうち約6%に当たる2568人がワクチンの2回接種者だった。これはあくまで症状が出た人に占める割合。同紙は「2回接種後に感染した無症状者も多い可能性がある」ことから、「市中での検査数をより充実させる必要がある」と指摘している。
政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長は15日の衆院厚生労働委員会で、「ワクチンを接種してもゼロにすることはできない。ウイルスとの闘いは続く」と語り、その期間については「神のみぞ知ることだが、2、3年プラス」との見通しを述べている。