povo「基本料金ゼロ円」でライバルリード 「賢く安く」で利用者取り込みねらう
au(KDDI)のスマートフォン(スマホ)向け低価格料金プラン「povo」の料金設定が変わる。2021年9月下旬から「povo2.0」として契約を受け付け、月額基本料「ゼロ円」で提供される。既存のプランは「povo1.0」という名称となり、新規申し込みは9月下旬で終了する。
9月13日にKDDI・沖縄セルラー電話が発表した。スマホ料金競争に一石を投じることになるのか。
「ベースプラン」に「トッピング」
基本となる「ベースプラン」は月額基本料「ゼロ円」で、使用可能な月間データ容量も「ゼロ」ギガバイト。ただし、送受信最大128kbpsという低速でのデータ通信は可能だ。データ通信サービス「Skyberry」の公式サイトによると、128kbpsは「通信速度としては非常に遅い」。
国内通話料は30秒あたり22円(税込・以下同)、国内SMS利用料は1通を送信するごとに3.3円が発生する。 利用方法に合わせて、ベースプランに追加で各種「トッピング」を購入する使い方が提示されている。電話をかけたり、SMSを送ったりしない限り、月額料金は発生しない。ただし公式サイトによると「別途所定の手数料等の費用がかかる場合」があるほか、一定期間トッピングなどを利用しなければ、契約解除となり得る。
「データトッピング」を購入すればauの5G(第5世代移動通信システム)回線や、5Gに次いで高速な「4G LTE」回線を利用できる。データトッピングには、以下6種類がある。
「1GB(ギガバイト)7日間」(390円)
「3GB30日間」(990円)
「20GB30日間」(2700円)
「60GB90日間」(6490円)
「150GB180日間」(1万2980円)
「データ使い放題24時間」(330円)
加えて、月額550円で5分以内の通話かけ放題になる「通話トッピング」などもある。現実的にはこうしたトッピングをすることになるだろう。
スマホ・ケータイジャーナリストの石川温氏に取材すると、「(基本料金)ゼロ円のインパクトは大きい」と評した。
新型コロナウイルス禍で外出を控える人も多い中、回線をゼロ円で維持できるのはメリットとして大きいと話す。普段は家にいて週末のみ出かける人であれば、基本ゼロ円で週末のみ「データ使い放題24時間」(330円)をトッピングして利用する選択肢もあるため、「かなり賢く使えるのではないでしょうか」。
どれだけデータ容量を使うか
また、普段使っているスマホ回線に加えて、「2つ目」を持っておきたい人にとっても魅力的だと石川氏。自分から発信はせず、着信時のみ通話する使い方でも回線を維持できる。
発表によると、「180日間以上有料トッピングの購入などがない場合、利用停止、契約解除となる」ことがある。ただ石川氏によると、たまに1日だけ使い放題のトッピングで料金を払うなどして維持すれば「賢く使える」とのことだ。自由な運用ができる点で、ソフトバンクの「LINEMO」やNTTドコモの「ahamo」とは差別化されている。
ただ、データトッピングがデータ量ごとに6種類存在しているため、自分がどれだけデータ量を使うかを把握できない人にとっては利用のハードルが高いとの指摘だ。この点について、「上級者向けのプラン」と分析した。
今後は複数の回線を持ちたい、スマホを安く使いたいというユーザー、料金プランの乗り換えに慣れている利用者がpovoに移行していく可能性がある。
ゼロ円という「インパクト」から、NTTドコモやソフトバンクが対抗プランを発表しなければ契約者の増加も見込めると石川氏はみる。
なお、月額基本料金ゼロ円のプランは「Rakuten UN-LIMIT VI」として楽天モバイルも用意している。こちらは月々1ギガバイトまでゼロ円で利用できるというメリットもある。ただ、回線のサービスエリアはau・povoの方が広く、通信の安定性を重視する人にとってはpovoが選択肢になり得ると話した。