新型コロナ感染は減ったが死者増える ワクチン接種遅い50代以下が3割
新型コロナウイルスの新規感染者は全国的に減少しているが、逆に死者数がこのところ増えている。重症者数も高止まりのままだ。政府の感染症対策分科会は2021年9月8日、緊急事態宣言を解除するにあたって、新規感染者数のみならず、医療のひっ迫状況を重視する考えを明らかにした。政府は19都道府県の緊急事態宣言を月末まで延長する。
医療現場は厳しい
NHKによると、8日18時半段階の全国の新規感染者数は1万2396人、死者は89人。今回の第5波でピーク時の8月20日には、新規感染者が2万5876人、死者が36人だった。この20日間ほどで新規感染者数は半減したが、死者数は大幅に増えていることがわかる。
全国的にみると、9月8日の新規感染者と死者の比率は約0.71%。都道府県別では、東京都は新規感染者が1834人、死者17人。千葉県は新規感染者が610人、死者12人。新規感染者と死者の比率は、東京では1%に、千葉では2%に迫っている。各県の状況をさらに調べると、茨城県は感染者が206人で、死者4人。三重県は感染者が111人で死者4人。死者比率が高い。
全国の重症者の数は、8月20日には1816人だったが、9月8日には2211人に増えている。世間では新規感染者数が減って、安ど感が広がりつつあるが、医療現場の厳しさは増しているのが現状といえる。
「低い水準」だったのか
今回の第5波では、高齢者へのワクチン接種が先行していたこともあり、新規感染者が増えた割には死者が少ないという指摘もあった。例えばフジテレビは8月20日、「直近1週間の10万人あたりの新規感染者数に占める新規死亡者数」について、「日本は0.12%」「世界的にみて低い」と政治部記者が報じていた。
菅義偉首相も22日、医療関係者との面談で、「新型コロナの新規感染者に対する死亡率が世界に比べ非常に低い状態」という認識を示していた。
これに対し、日刊ゲンダイは23日、「感染してから亡くなるまでタイムラグがあります。少なくとも1か月程度の期間を参考にしないと、意味がありません」という昭和大医学部客員教授の二木芳人氏(臨床感染症学)の見方を紹介。さらに同紙は、日本の「累計感染者における累計死者数の割合は、決して『低い水準』ではない」と指摘していた。
高齢者の死者は抑制
新型コロナウイルスは高齢者が感染しやすく、死亡率も飛び抜けて高い。読売新聞によると、厚生労働省は、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだ結果、65歳以上の高齢者の感染が、7~8月に10万人以上抑制できた可能性があるとの試算をまとめ、8日に開かれた感染状況を分析する助言機関の会合で報告した。死亡者数は8000人以上減少させた可能性があるとしている。
ただし、高齢者への感染を抑制できた一方で、デルタ株による第5波では、ワクチン接種が遅れた20~30代の新規感染者が激増。さらに死者も、東京都が8月の死者200人を調べたデータによると、50代以下が58人。全体の29%に達した。死者が最も多かった2021年2月には、50代以下が8人と全体の1.6%にとどまっていた。
NHKによると、第5波では高齢でなくても亡くなる人が増えているのが特徴。しかも8月は50代以下の死者58人のうち自宅療養中だった人が14人。医療のひっ迫に加え、容体が急変するケースが増えるなど、デルタ株の怖さを見せつけている。