ワクチン「他社製と併用」アリか 「ブースター接種」始まれば数量確保に不安

    新型コロナワクチンの「交差接種」は可能なのか――交差接種とは、一回目のワクチンがファイザー、二回目がモデルナというように違うメーカーのワクチンを使うことだ。

   ワクチン接種を担当する河野太郎行政改革相は2021年8月29日、「政府部内で検討している」と語った。ところが、政府の代表格である加藤勝信官房長官は30日、「異なるワクチンの使用を積極的に推奨する状況にはないと認識している」と否定的な考えを述べた。ワクチンを巡って両氏の見解が対立するのは今回で2度目だ。

予約済みの海外製ワクチンが順調に入ってくるか、不安が残る
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そもそも想定外だが

   朝日新聞によると、河野大臣は29日のフジテレビの報道番組で、「英アストラゼネカ製の有効利用に向けて、1回目で同社製を接種した場合、2回目で米ファイザー製や米モデルナ製のワクチンを使用できるかの検討を進めている」と語った。「認められれば接種加速化につながる」というのが理由だ。

   ところが、この河野氏の発言にすぐさま反応したのが加藤官房長官だ。30日朝の記者会見で、「有効性、安全性に関するデータは十分に得られていない。異なるワクチンの使用を積極的に推奨する状況にはないと認識している」と語った。

   厚生労働省は、ワクチン接種にあたっては1回目と2回目で同じ種類のワクチンで受けるように呼びかけている。2回とも同じ種類のワクチン接種を求めているのは、治験では、違うメーカーのワクチンは用いられておらず、他社製ワクチンとの併用はそもそも想定されていないことによる。

   ワクチンの治験は米国のメーカー、ファイザーやモデルナが行っている。「交差接種」が可能かどうかは、日本政府の判断では決めにくい。加藤長官の発言は、そのあたりの事情を踏まえたものだ。

アストラゼネカ製や国産の使い道

   河野大臣が「交差接種を検討」などと発言している背景には、「ブースター接種」の問題がある。当初ワクチンは2回打てば安全、と言われていたが、デルタ株のまん延や、ワクチン自体の有効期間が短くなってきたことから、各国で「3回目=ブースター接種」が始まっている。

   河野大臣は、やがて日本でも3回目の接種が行われるようになる、そのためのワクチンは確保していると明かしている。しかし、現在進行形のワクチン騒動でも明らかなように、予約済みの海外製ワクチンが順調に入ってくるか、不安が残る。一方で、日本はアストラゼネカ製のワクチンをすでに大量に入手しているが、利用が限定されている。そのため、「3回目」などをアストラゼネカで埋め合わせることが出来ないか、という考えが浮上する余地はあった。

   しかし、厚労相を務めたこともある加藤官房長官は、「治験」という科学医療上のエビデンスにこだわり、交差接種が簡単ではないことを示した。

   今後もコロナが長引くとなれば、さらに多くのワクチンが必要になることが想定される。時期によってはワクチンがひっ迫、開発中の国産ワクチンを割り込ませて使用することも考えられる。あらかじめワクチン同士の相性などを検討しておく必要があることは確かだが、ワクチン後発国の日本リーダーシップをとるのは難しそうだ。

河野発言、以前も否定

   河野大臣と加藤長官の発言のずれはこれまでにもあった。

   河野大臣は6月20日、日本テレビ系の番組「シューイチ」で、新型コロナワクチン接種後の効果について「少なくとも1年は持つ」と語った。ところがこの時も、加藤長官が翌21日の記者会見で、「長期の有効性のデータは十分に得られていない」と述べ、河野氏の見解を否定した。

   ワクチンの有効期間については、このところ様々な調査結果が報じられている。有効期間は想定よりも短いとされ、数か月で効力が落ちるという調査結果が多い。今や「1年」という見方はほとんど消えている。

   今回の「交差接種」に関する河野vs加藤発言も、この有効期間に関するやり取りと似た展開となっている。ワクチン担当大臣の踏み込んだ発言が、政府中枢の官房長官によって否定されてしまった。国民には分かりづらく、政府のコロナ対策への信頼感が揺らぐ結果となっている。

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