日本のサウナと五輪の深い関係 「メルボルン」出場選手が導入、「東京」で選手村に
サウナは、北欧フィンランドが発祥とされる蒸し風呂だ。実は日本でも、現代こそ「風呂」といえば浴槽に湯を張るスタイルだが、遠い昔は蒸し風呂のことを指していたという。
近代になって、再びサウナが日本に登場したのはいつ頃か。その歴史を探っていくと、オリンピックが深く関係していた。
6世紀に仏教の伝来とともに
住宅設備大手LIXIL(リクシル、東京・江東)の公式サイトでは、蒸し風呂を、6世紀に仏教の伝来とともに伝わってきたと説明している。奈良時代には、寺院が、貧しい人々に浴室を開放する「施浴(せよく)」が盛んに行われるようになったとのこと。香川県さぬき市にある古代サウナ「塚原のから風呂」は、奈良時代に活躍した仏教僧・行基がつくったとされている。
湯に漬かる方式ができたとされているのは、江戸時代。だが、蒸し風呂式であった銭湯が、現代のようなスタイルに変わったのは、明治時代に入ってからという。
「ナショナルトレセン」にも
社団法人日本サウナ協会が発行する「SAUNA新聞」の第337号によると、近代日本で蒸し風呂が誕生したのは、1956年。戦後の話だ。「東京温泉」をつくった許斐氏利(このみ・うじとし)さんは、この年に開催されたメルボルンオリンピックに射撃選手として参加した。選手村で蒸し風呂によく似た施設を他国選手が使っているのを見たのが、契機となったという。帰国後に許斐さんは、乾式サウナ風呂を「東京温泉」内に造設したのだ。
1964年の東京五輪では、出場選手の要望によりサウナが選手村に造られ、好評だった。フィンランド大使館の協力もあって、その後日本国内に広まったそうだ。
時は流れて、2021年。先日閉幕した東京五輪、現在開催中の東京パラリンピックで使われている選手村や、日本人選手が練習に活用した「味の素ナショナルトレーニングセンター」(東京・北)には、サウナが設置されている。スポーツ選手にとって、なくてはならない施設として定着したようだ。