東京のコロナ感染者減で「ピークアウト」説 それでも全国重症者は過去最多
新型コロナウイルスの感染者が東京で急減している。そろそろ「ピークアウトかもしれない」という声も聞かれるようになった。各メディアで現状を専門家に聞いているが、まだまだ油断できない、という見る人が多い。
「陽性率」は高い
デルタ株による感染拡大がいち早く進んだ東京都。このところ、8日連続で前の週の同じ曜日の人数を下回っている。特に2021年8月30日の月曜日は、新規感染者が1915人にとどまった。1日の感染者が2000人を下回るのは7月26日以来のことだ。
しかし、日本テレビによると、都の担当者は「ピークアウトしたとはまだ言えない。人流も増えていて、学校も本格的に再開するため、また増加に転じる可能性がある」と警戒を緩めていない。
都のウェブサイトを見ると、「陽性率」は依然として高い。また、検査数自体にもばらつきがある。30日に発表された行政検査数は3日平均で9433人。普段よりかなり少ない。特に29日は3112人にとどまっている。検査数が増えれば、もう少し感染者数が増える可能性もありそうだ。
また、この日の都内の死者は12人。かなり高い確率になってきている。自宅療養中の死者はこれまでに計21人になっている。
デルタ株で世界が変わった
テレビ朝日は、現状が「ピークアウトなのか、高止まり」なのか、専門家に聞いている。感染症疫学が専門で、WHO(世界保健機関)でも感染対策に携わっていた大東文化大学の中島一敏教授は、「安心はできません。この2週間くらいは東京都内の人流が増えています。その後に感染者が増えることが見えていますので、油断できないと思います」と次のように語っている。
「ワクチンだけでデルタ株の流行をコントロールするのは難しい現状です」
「ワクチン接種が進んでいる、英国では、16歳以上で2回目の接種を終えた人が、28日時点で78.4%、イスラエルでは30日時点で、12歳以上が75.5%となっています。ただ、どちらの国でも、新規感染者数は、ここ数カ月で急激に増えています」
「デルタ株の影響は深刻だと思います。デルタ株は感染力が強く、ワクチンの効果が減弱することが要因です。加えて、それらの国では、人が動いて感染の機会が増えたことも要因の一つだと思います。デルタ株が出る前は感染者数が減っていたので、デルタ株の出現によって大きく状況が変わってしまった、世界が変わったと考えるべきだと思います」
接種2回でも安心できない
デルタ株が出現するまでは、ワクチン接種で新型コロナを抑え込めるという見方が一般的だった。しかし、各種データで、デルタ株に対してはワクチン効果が落ちるということが明らかになっている。加えてワクチン効果には、かなりの個人差もあるようだ。
日刊ゲンダイは、和歌山県がまとめた「ワクチン2回接種後の抗体保有調査結果」(12日付=7月下旬~8月上旬実施、対象100人)を紹介している。それによると、抗体が作られなかったり、中和抗体獲得に至らなかったりしたとみられるケースがあった。
調査で、「抗体値が十分上昇しない事例が、高齢者や一部の基礎疾患を持つ人に見られた」「抗体値が高値であっても、PCR陽性で発症例があること、更には、他者に感染させた事例もある」などがわかったという。
同紙は昭和大医学部客員教授の二木芳人氏(臨床感染症学)に今後の見通しと対策を聞いている。二木氏は、「ワクチンの感染防止効果は100%ではありません。十分な抗体を得られない人が一定数は出てしまうので、接種を完了したからといって安心はできない。デルタ株の猛威は続いていますから、とりわけ高齢者や基礎疾患のある人は注意が必要です。人混みでウレタンマスクはダメ。うつらない、うつさないためにも不織布マスクをつけましょう」と、引き続き注意するよう呼び掛けている。
東京都では、2回のワクチン接種をしていたにもかかわらず、すでに12人が亡くなっている。また全国の重症者は、8月31日の厚生労働省発表で2110人となり、19日連続で過去最多を更新した。