パラリンピック学校観戦どうなる 子どもの感染増、部活中止、夏休み延長だが
新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大する中で2021年8月24日、東京パラリンピックが始まった。大きな論議となっているのが、小中学生らを対象とした「学校連携観戦プログラム」、いわゆる「学校観戦」だ。自治体によって判断が分かれ、保護者や子どもたちは不安が尽きない。
東京は大半の区が見送り
「学校観戦」は、競技会場がある1都3県で、保護者の意向などを踏まえ自治体などが参加するかどうか決める。TBSの調べによると、24日未明段階では、東京23区で17区が「学校観戦しない」。江東区、渋谷区、杉並区は学校観戦をするが、いずれも保護者の承諾を得る手続きをしていた。「検討中」または「回答しない」と答えたのは、新宿区、江戸川区、港区だった。23区の足並みがそろわない形になっていた。
感染対策については、公共交通機関は使わずに徒歩または貸し切りバスで移動し、会場では座席の間隔を空ける、などの対策がとられる模様だ。杉並区が2400人、渋谷区が900人、江東区は2万3000人ほどの児童・生徒が参加する予定だった。
TBSの取材に、感染を実施する学校の教員が話している。
「2年ほど校外学習自体がほとんど行えていない、子どもたちも慣れていない。教員もほぼ初めてのコロナ禍での大規模な引率。感染のリスクがある行為になると思うので、不安を抱えている先生は多いと思う」
その後、同日夕までに江東区と江戸川区は中止を発表した。
「貸し切りバスでの移動」に不安
デルタ株によるコロナ第5波の大きな特徴は、若年層に感染が広がっていることだ。10代や10歳未満でもかなりの割合で感染する。ワクチンの接種は、12歳未満は対象外。小学生を持つ保護者には不安が募る。
産経新聞によると、18日に開かれた都教育委員会の臨時会では、委員5人のうち出席した4人全員が反対意見を表明。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は19日の参院内閣委員会閉会中審査で「(五輪開催時と比べ)感染状況はかなり悪い」として、同プログラムの実施に慎重な姿勢を示した。
読売新聞は22日、感染拡大で全国100か所の保育施設が休園していると報じた。朝日新聞によると、横浜市では24日から順次授業が始まる予定だったが、31日まで臨時休業となっている。対象は小中学校など市立の全508校。緊急事態宣言が発令中の9月12日まで学校ごとに短縮授業やオンライン学習を実施し、中高の部活動は中止する。
市教育委員会によると、市内では児童や生徒の感染が急増。夏休み中の7月21日~8月19日の約1か月で、昨年度1年間を上回る808人が感染したという。
神奈川県大和市では市立小中学校全28校で25日まで夏休みだったが、31日まで延長された。市教委によると、感染者が7月は10代未満が27人、10代が49人だったが、8月は19日時点で10代未満が60人、10代が110人と倍増。さらに感染が拡大する恐れがあるため、延長を決めたという。
今や、子供たちの間でも感染が多発している。「貸し切りバスでの移動」などは大きなリスクにもなる。
感動はテレビで十分
観戦を予定していた自治体でも取りやめにするケースが出ている。「あなたの静岡新聞」によると、静岡県では8月上旬、県内の3校、約340人がプログラムに参加の意向を示していたが、21日までに、いずれも取りやめとなった。
大会組織委の橋本聖子会長、小池百合子東京都知事、丸川珠代五輪相らは学校観戦の教育的意義を強調し、安全対策に万全を期したうえで学校観戦を実施したいとしている。
しかしながらすでに、21日までに確認されたパラリンピック関連の感染者は、100人を超えたという。
毎日新聞によると、秋田県の佐竹敬久知事は23日の定例記者会見で、原則無観客となった東京パラリンピックで「学校観戦」が実施されることについて、「パラリンピックをこの(感染)状況で実施することを正当化する。その『だし』に子供たちを使った感じがする」と批判的に言及した。
さらに「そこまで無理して実施する必要はないのではないか。感動はテレビで見れば十分」と持論を述べたという。