子どもの口腔リスクと「唾液力」の重要性 小児歯科の専門家が講演
オハヨー乳業(岡山市)と、ヘルスケア商品を手がけるオハヨーバイオテクノロジーズ株式会社(東京都千代田区)は、子どもと親の口腔環境・健康に関するセミナー「子どもの口腔リスクの現状と、マスク生活で見直したい唾液力の重要性」を2021年8月12日に開催した。
小児歯科を専門とする国立モンゴル医学科学大学の岡崎好秀客員教授が講演し、新型コロナウイルス禍における子どもの口腔環境や、「唾液力」の向上方法について説明した。
「マスクを使うとどうしても...」
子どもの虫歯は年々減少している一方で、現代では「歯肉炎」が問題となっている。歯肉炎は歯周病の初期段階にあたる。岡崎教授が提示した2019年度福岡県小学校・中学校健康診断の集計によると、小学1年生は4.8%が軽度の歯肉炎を発症するが、小学6年生ではさらに14.9%に増える。
柔らかいものや甘いものを食べると歯が汚れ、歯垢がつきやすい。歯垢を放置すると、歯石へと変化する。歯垢・歯石はむし歯や歯周病の原因となり、歯を失うことにつながる。こうした現代の子どもの口腔リスクの要因には、砂糖を摂取する機会や柔らかいものを食べる機会が増えたことが背景にある。さらに、コロナ禍ではマスク着用による口呼吸も問題となっている。
「マスクを使うとどうしても息がしにくいので、口呼吸になる。そうすると口の中が乾燥して虫歯、歯周病、あるいは口臭の原因につながっていく」
子どもの口腔ケアで大事なことは、まず乳幼児に砂糖の味を教えないこと、幼児期は親が歯磨きを手伝ってあげること、そして「唾液力の向上」だ。
3歳までの幼児は、親が歯を磨こうとしてもいやがって暴れてしまうケースがある。こうした場合、そもそも砂糖の入った食品を与えないようにすればよいと岡崎教授は指摘する。砂糖を与えなければ、うまく磨くのが難しくても歯が汚れづらいという。
また親が磨いてあげる場合には、コップの水でブラシを洗いながら行うのがよいと岡崎教授。磨くうちにコップの水が汚れていく。この汚れを子どもに見せれば、歯磨きの重要性を理解してもらえるとのことだ。
唾液力向上のためには
そして「唾液力」。唾液はカルシウム(歯の補修作用)やリゾチーム(抗菌作用)、成長ホルモンや糖タンパク(歯の保護)といった人体に有益な物質を含む。唾液をしっかりと分泌することで、体内への細菌・ウイルスの侵入、むし歯、歯周病、口臭を防ぎ、食べ物の消化を助ける作用がある。歯の成長も促進できる。
ところが、最近はうまく唾液を分泌できていない子どもが増えている。唾液が出なくなる要因として、「水洗式咀嚼」が挙げられる。食事の時に食べ物を水分とともに流しこむ食べ方のことで、これを行うと唾液が出づらくなるという。
量が多く質のいい唾液を出す「唾液力」の向上のためには、食生活を改善し、よく噛むのが重要だ。しっかりと噛むことによって、唾液は多く分泌される。
岡崎教授は、「あいうべ体操」と呼ばれる体操も紹介した。大きな声で表情や口を動かしながら「あ・い・う・べ」と発音するもので、これを10回・1日3セット行う。唾液が出るようになる上、口呼吸の改善にもつながるという。
また、口内の菌そう(微生物の集団)を変える「バクテリアセラピー」も有効だとした。セミナーでのオハヨーバイオテクノロジーズの説明によれば、バクテリアセラピーとは「『ロイテリ菌』などの良質な善玉菌を補給し、全身の菌バランスを整える健康法」とのことだ。