ワクチン接種は年齢順かと思ったら 若者優先、中高年「後回し」で影響あるか
新型コロナウイルスのワクチン接種で、福島市の木幡浩市長は10~20代の若い世代を優先し、ワクチン接種を進めると2021年8月10日の会見で発表した。これまでの感染拡大の傾向分析から、若年層への接種が今後の感染拡大防止や重症者数の抑制になるとの判断だ。
接種の際、年齢による「優先順位」に正解はあるのか。J-CASTトレンドは、感染症に詳しい東北大学災害科学国際研究所の児玉栄一氏に取材した。
東京・大田区や新宿区でも
日本では、
(1)医療従事者 (2)高齢者 (3)基礎疾患を有する人や高齢者施設の従事者など
の順で、新型コロナのワクチン接種を行っている。その後は、若者から中高年の世代までが順番待ちの状態だ。
福島市のほかにも、若者を優先する自治体は複数ある。東京都大田区では、上述した(3)までの接種が終わったのち、まず12歳~18歳以下、次に19歳~39歳以下、最後に40代~59歳以下の順で接種を進める。新宿区では、(3)の次に20代~30代の予約を優先させた。
たしかに感染者の多くは若者だが、新型コロナが重症化しやすいのは若者よりも中高年の世代だ。厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の"いま"に関する11の知識」の21年8月版には、20年6~8月の期間で各年代の重症化した人の割合が掲載されている。20代では0.03%なのに対し、40代は0.54%、50代は1.47%と高くなっている。
それでも40~50代を後回しにして大丈夫か――。
児玉氏によると、現時点では若者を優先するのが正しいのか否か、結論づけるのは難しい。接種順をめぐる問題は他国でも議論されているが、明確な答えが出ていないはずだと説明する。
着実にできるところから接種を
接種の優先順位は、各自治体によって異なる。まず重症化するリスクの高い高齢者、医療従事者、基礎疾患を有する者の接種を優先させて、「(あとは)自治体の判断ということになったのでしょう」と児玉氏は分析する。
児玉氏は「日本全体を考えると、すべての市町村が同じ打ち方をしてしまうと、本当はどうしたらよかったか、(接種が終了した後に)わからなくなります」とも説明する。年齢が高い順、逆に若い順と接種パターンが複数あったほうが、後日参考にするうえで貴重なデータになるとはいえるだろう。
たた現状では、接種の順番に明確な答えはない。児玉氏は、今やるべきことは、優先順位はあっても着実にできるところから接種を進めることだと指摘した。