五輪の副賞「ビクトリーブーケ」 花には深い意味が込められていた
オリンピックの表彰式で、選手が花束を高らかに掲げている姿を目にしたことがあるだろう。これは「ビクトリーブーケ」といって、メダルとともに贈られる副賞だ。
東京オリンピック・パラリンピック(東京五輪)でも、メダリストにビクトリーブーケが贈呈されている。ただ選手を祝福するための花束というわけではなく、その国の歴史や文化にちなんだ花が使われている。
東日本大震災で被災した地域で育てられた花たち
東京五輪で贈られているビクトリーブーケには、東日本大震災で被災した地域で育てられた花が使用されている。「トルコギキョウ」(福島県産)、「ヒマワリ」(宮城県産)、「リンドウ」(岩手県産)、「ナルコラン」(福島県産)などだ。それぞれに復興への願いが込められている。
東京五輪の公式サイトによると、例えばトルコギキョウは、福島県が県ぐるみで生産に取り組んでいる。震災による影響で農作物の出荷が減った際、県は特定非営利活動法人(NPO)を立ち上げ、花を栽培することで復興への希望を見出したという。黄色に藍色と、美しい配色の花束には、今大会の公式マスコットキャラクター「ミライトワ」が付いている。日本ならではのビクトリーブーケに、ツイッター上ではかわいい、私も欲しい、と評判だ。
ビクトリーブーケは、過去の五輪でも贈呈されてきた。21年7月25日付日刊スポーツ(電子版)によると、98年の長野五輪では、長野産の「アルストロメリア(百合水仙)」のブーケだった。2000年のシドニー五輪では、カンガルーの前足のような花を咲かせる「カンガルーポー」を使った花束が贈られた。こちらもオーストラリア原産の花だ。
オリーブの枝で作った葉冠と花束
2004年、ギリシャで開かれたアテネ五輪では、オリーブの枝で作った葉冠と、オリーブを使ったビクトリーブーケが贈られた。
ギリシャはオリンピック発祥の地だ。古代オリンピックで、ギリシャの英雄ヘラクレスは、庭に植えたオリーブの枝をオリンピックの勝者に与えた、といわれている。オリーブのブーケは、まさにオリンピック発祥の地ならではの演出だった。
2012年のロンドン五輪は、黄色やピンク、オレンジ、緑のバラに、ラベンダーなどが組み合わさった色とりどりの花束だった。フローリストのジェーンパッカー氏がデザインし、英国産の花で作られた。英国らしい美しいブーケで、メダルを獲得した選手に華を添えた。
一方で、副賞がビクトリーブーケではない大会もあった。16年のリオデジャネイロ五輪では、メダル置き。18年の平昌五輪では、平昌の山並みをモチーフにしたオブジェが贈られた。