新型コロナ感染爆発の瀬戸際 急拡大はデータが予測していた
東京の新型コロナウイルス感染者数は2021年7月27日、過去最高の2848人を記録した。緊急事態宣言を発令しているのに、いっこうに感染者数が減らない。東京五輪開催に関連して、22日から4連休となり、人出が減ってコロナの抑制につながるのではないかという期待感も一部であったが、真逆の結果となっている。
感染の拡大は、実はいくつかのデータから予想されたものでもあった。
火曜日から増える
一つは火曜日の拡大。曜日ごとの感染者数を辿ると、東京では月曜日が最低で火曜日から増加するという傾向が続いている。東京都福祉保健局がウェブサイトで理由を説明している。
それによると、都は毎日、発生届を保健所から受理し、新規患者数として発表している。この発生届は、毎朝9時の段階で、前日の9時からの24時間を取りまとめて、当日分として夕方発表している。通常、検査を実施した日から都に発生届が提出されるまで2~3日かかるという。医療機関は、土曜日・日曜日が休みのところも多い。
このため月曜が最小人数で、火曜から増える、というのがパターンになっている。ところが今週は26日の月曜に、すでに1429人。前週の月曜を702人も上回り、月曜日としては過去最多となっていた。したがって翌日の27日は、前週の火曜日よりも大幅に増えることが想定されていた。
曜日ごとに、前週と比較した増え幅も、26日の急増を予測していた。例えば日曜日の場合、4日→11日は96人、11日→18日は394人、18日→25日は755人増。火曜日は同様に、160人→225人→702人と急増している。多い時は前週から3倍ほどの増加。この趨勢を火曜日も踏襲し、237人→557人→1461人。
直近の日曜や月曜に増加率を考えると、27日の火曜が大幅増になることは十分予測できたといえる。
陽性率も過去最高
さらに「陽性率」からも急増は予測できていた。都は陽性率についてもウェブサイトで説明している。
NHKによると、都の「陽性率」は、その日に行われたPCR検査で、陽性と判明した人数を、検査した人数で割って算出したものではない。その日までの1週間に陽性と判明した人数の平均を、その日までの1週間に検査した人数の平均で割って「陽性率」を算出している。たとえば1週間に陽性と判明した人の平均が22人で、同じ期間に検査した人の平均が292人なら、7.5%となる。
都の陽性率は、6月後半から7月上旬段階では4~5%台だったが、徐々に増加、やがて急速に右肩上がりになって7月19日は10%を突破し、26日には15.7%。過去最高だった1月7日も上回った。
前述のように休日は検査数が大幅に減るので、陽性率がアップしていても、感染者数は直ちに増加しない。検査数が増える平日になると、陽性率アップがもろに反映され、感染者数が急増することは容易に予測できた。
首相の認識とズレ
感染者の年代分布からも急増は予測できた。27日の場合、東京都では20代が951人、30代が610人で半数以上を占めている。こうした傾向は全国的にも変わらない。
この理由は、はっきりしている。ワクチンの接種が追い付いていないからだ。
朝日新聞は毎日、年代別のワクチン接種率を掲載している。それによると、2回目のワクチンの接種を済ませた人は全国で約2680万人。21.1%。大半は高齢者で、64歳以下は約250万人。2.7%に過ぎない。約3週間前の数字に比べて2%しか増えていない。
小池百合子知事は27日、「若い方にワクチンを打ってもらうことが重要だ」と話しているが、結局のところ、ワクチンが行きわたる前にデルタ株など感染力の強いウイルスがまん延し、対策が追い付かないのが現状といえる。
TBSなど各メディアは、菅義偉首相が26日に発売された月刊誌のインタビューで、オリンピック開催によって、新型コロナの感染が拡大するとの批判があることについて、「ワクチン接種者数が極めて順調に増えているため、その懸念はあたらないと思う」と述べていると報じたが、東京都の現状とは大きなズレがある。
西日本新聞は28日、「五輪さなかの感染爆発...現実味帯びる"最悪のシナリオ" 必死に平静装う政府」と報じている。