ゆうちょ銀行「大量の小銭預け入れ」有料に 神社「お賽銭」の扱いにひと苦労
ゆうちょ銀行は2022年1月17日から「硬貨取扱料金」を新設する。窓口で大量の硬貨を預け入れる時、これまでは無料だったが、新設後は51〜100枚には550円と、枚数に応じて手数料がかかるようになる。50枚まではひき続き無料だ。ATM(現金自動預け払い機)でも、硬貨1〜25枚の預け入れでは110円を求められる「ATM 硬貨預払料金」が新設される。
三菱UFJ銀行でも20年4月から101枚以上の預け入れで「大量硬貨取扱手数料」が発生し、三井住友銀行は19年12月より、301枚から「硬貨入金整理手数料」を徴収し始めている。同様の銀行は、ほかにもある。硬貨の取扱量が多い企業や、賽銭(さいせん)箱に小銭が多く入れられる神社を「直撃」しそうだが、それぞれに取材した。
集金に来る銀行員に渡す
通販サイトや実店舗を運営する玩具問屋・堀商店(名古屋市)の成瀬昭則さんに取材した。顧客からの現金での支払いなどにより、大量の硬貨が溜まる場合があるという。
同社では売り上げの管理のため、定期的に集金に訪れる取引銀行の担当者に硬貨も含めて一括で売上金を渡している。ATMや窓口などに自ら出向き、入金を行うことは基本的にない。この集金で、手数料は発生していないと話した。
千葉県成田市のケーキ店「ラ・クレマンティーヌ」の経理担当者によると、取引先の銀行では現時点で硬貨を預け入れる時の手数料は発生しないとのことだ。また硬貨は来店客の支払いへのお釣りで使用されるため、銀行に売上金を預け入れる時もほとんど紙幣になっている場合が多いと話した。
賽銭もキャッシュレスにと言うけれど
玉敷神社(埼玉県加須市)の取引先の銀行では、2019年ごろから501枚以上の硬貨について窓口での入金時に手数料が発生するようになったと、宮司の宮内由紀子さんは話す。賽銭は樹木の管理や建物の修繕などに使う。寄せられた賽銭を有効活用するため、手数料の回避に苦労しているようだ。
まずは硬貨を仕分ける選別機を購入した。50円玉・100円玉といった種類別に500枚ずつに仕分けている。500枚の預け入れならば、手数料はかからない。
ただ硬貨500枚を無料で預けられるのは、銀行の規則により1日1回まで。賽銭やお守りの売り上げなどを含めて、2020年度を例にすると玉敷神社では通年約9万枚の硬貨を扱っており、1日500枚までの預け入れでは小銭の処理が追いつかない場合もある。
500枚を超えて入金するため、銀行と交渉した。現在は500枚を超えて入金したいときには、まず神社の口座とは別に、宮内さんや夫個人名義の口座にも無料で硬貨を預け入れる。そして紙幣として引き出してから、神社の口座に改めて入金するようにしているという。
賽銭の中には接着剤などの異物の付着した硬貨や、外国のコイン、焚き火などで損傷したと思われる硬貨が混じっていることもあるという。選別機の故障にもつながるため、こうしたものを賽銭として寄せられると「困ってしまいます」。
銀行への入金時の手数料を避けるといった観点から、「賽銭をキャッシュレス化すればいい」という指摘を受けることもある。ただ、キャッシュレス決済の導入にも手数料がかかる。決済サービス会社の規則により賽銭には利用できないケースもあるなど、導入にあたっては様々な問題が存在すると話した。