ワクチン接種してもコロナに感染 東京五輪「ブレークスルー」が怖い
新型コロナウイルスに関連して「ブレークスルー」という言葉を見かけることが増えてきた。ワクチンを接種したにもかかわらず、コロナに感染することだ。
東京五輪で海外から来日する選手や関係者のほとんどはワクチン接種済みと思われるが、来日後の検査で陽性になる確率はゼロではない。
発生率はきわめて低い
「ワクチンを打っても防げない『ブレイクスルー感染』が米で1万件」(ニューズウィーク、2021年5月27日)
「ワクチン接種後にコロナ陽性『ブレークスルー感染』の頻度と原因は」(京都新聞、6月26日)
「コロナ変異株、ワクチン接種完了でも発症する可能性 CDCが警鐘」(CNN、6月26日)
「ブレークスルー」とは、英語で「突破する」「突き抜ける」という意味だ。コロナに関しては、米食品医薬品局(FDA)が承認したワクチンの接種を完了してから14日以上が経過した後に、新型コロナウイルス検査で陽性反応が出たケースのこと」(ニューズウィーク)。
米疾病対策センター(CDC)の調査報告書によると、米国では4月30日までに約1億100万人がワクチン接種を完了した。その後にフレークスルー感染が計1万262件報告されているという。
発生率はきわめて低いが、ニューズウィークによると、報告書は「全国調査は自発的な報告に頼るものだったため、データは完全ではなく、現実を反映したものではない可能性がある。ブレイクスルー感染をした多くの人、特に無症状の人や症状が軽い人は、進んで検査を受けない可能性がある」とも説明しているという。潜在的にはもう少し多いのではないかということを示唆している。
スポーツ界に新たな難問
気になるのは、変異株とブレークスルーの関係だ。CDCは25日、CNNの取材に対し、新型コロナワクチンは変異株に対しても予防効果があるとしつつ、一部の変異株に関しては、ワクチン接種を完了している人であっても症状を引き起こすことがあるかもしれないと説明。新型コロナワクチンは有効だとする一方、いかなるワクチンも「100%発症を防ぐ効果があるわけではない」と述べたという。
「ブレークスルー」への不安はすでにスポーツ界では現実になっている。ウォール・ストリート・ジャーナル日本版は27日、「ワクチン接種でも陽性、スポーツ界に新たな難問」という記事を配信した。
「米プロバスケットボール協会(NBA)のスター選手、ゴルフの全米オープン選手権優勝者、ウガンダの五輪コーチ――。彼らはスポーツイベントの主催者に新たな頭痛の種をもらしているという点で共通している。新型コロナウイルスワクチンを接種しているにもかかわらず、検査で陽性反応が出たのだ」
ワクチンの予防効果は米モデルナやファイザー製でも94~95%とされている。英アストラゼネカ製は70%台。ウガンダの選手団はアストロゼネカのワクチンを接種済みだったという。
ブレークスルー感染が起きた選手の大半は無症状。徹底した検査をしていなかったら、感染は気付かれなかったかもしれない。逆に言えば、それゆえ、ブレークスルーは、巨大イベントの主催者にとって大きな問題となると同紙は指摘する。
「夏季五輪のケースで言えば、日本だけにとどまらず、参加200カ国・地域にとっても感染流行を招きかねない。第一、競技中に大混乱を招くだろう」
「ワクチン接種後に陽性反応となった選手は、他人への感染力があるのか? 彼らとの濃厚接触とはどのような意味があるのか? 人生最大のイベントから、誰を出場停止とするのか?」
「プレーブック」で細かく規定
五輪選手団の検査体制については15日に公表された「プレーブック」で細かく規定されている。NHKによると、選手やコーチなどは、日本に出国する前の96時間以内に2回の検査を行い、このうち1回は72時間以内に行う必要がある。
この時には、唾液か鼻の奥のどちらかの検体を使い、PCR検査や抗原検査など日本政府が承認している方法で検査を行うことが求められている。
そして日本に入国する際も空港で検査を受け、その結果が出るまでは空港内で待機し、陽性だった場合は選手村の発熱外来に搬送されて再検査を受ける。空港で陰性だった場合でも、原則として、毎日検査を受ける必要がある。
検査はまず唾液による抗原検査が行われ、選手などは朝9時と18時のいずれかで検体を提出する。最初の検査で陽性か、不明確だった場合は、同じ唾液の検体を使ってPCR検査をするという。
内容は今後も修正される可能性があるとされている。27日の朝日新聞によると、政府はインドで確認された変異株(デルタ株)が流行する6か国から来日する選手に対し、自国から出国するまでの7日間、毎日ウイルス検査をするよう求める方針を固めたという。