新型コロナ長期化で主婦はストレス募る 家族にイライラ...専門家が解消術指南
「昼食の準備に手を抜けない」 「共働きなのに夫が家事をしてくれない」 「子どもが勉強しない」
新型コロナウイルスが流行し始めてから1年以上。我慢の生活が続く中、家族に対してこんなイライラを感じる主婦も多いのではないだろうか。
J-CASTトレンドは、臨床心理士、公認心理師で「半蔵門心療クリニック」に勤務する古田雅明氏に取材。上手に息抜きしながら日々を過ごすコツを聞いた。
些細なことにいら立ち、ため込む
そもそもストレスは、大きく3つに分かれる。ひとつは、大地震や世界的な感染症の問題といった大きな出来事によるストレスで、新型コロナウイルスの流行がこれにあたる。次に、受験や結婚など人生でめったに経験しないライフイベントによるストレスだ。
そして3番目が、日常の些細ないら立ちによるストレス。「デイリーハッスルズ」(daily hassles)と呼ばれ、家族へのいら立ちはこれに分類できる。
ストレスには発散が必要となる。しかし古田氏は、コロナ禍では気分を高揚させるようなあらゆること、すなわち「デイリーアップリフツ」(daily uplifts)が制限され、こまめなストレス発散が難しいと説明する。デイリーアップリフツには、良いニュースを耳にするなど受動的な意味も含まれる。
それだけではない。本来は良い気分にしてくれるデイリーアップリフツによる刺激も、多すぎると不快な感情につながるデイリーハッスルズになることがある。たとえば、これまで家族との時間が心の癒しになっていた人であっても、在宅勤務などで常に家族が自宅にいる状態が続くと、それ自体がストレスに変わる。また、週末に映画鑑賞が楽しみだった人が、何らかの理由で毎日映画を見なければならなくなったとする。それがいつまで続くか分からない状況になれば、映画そのものがストレスに変わるイメージだ。
コロナの長期化で、これまで気にならなかった些細なことにいら立ち、それをため込む主婦が増えているのでは、と指摘する。
「ここが気に入らない」具体的に言語化を
ストレスを対処するには、まずそのストレスを自覚(認知)する必要がある。しかし、家族に対するいら立ちは認知しにくい、と古田氏。とくに、大切な存在の家族を疎ましいと思ってはいけないと強く感じる真面目なタイプの人は自覚しにくいという。家族をストレスと思いたくない否認の心理が働き、無意識に抑圧されてしまうのだ。ストレスが胃痛や頭痛などの身体症状としてあらわれても、その原因が家族であると自覚できない。
アップリフツがハッスルズに変わる場合があるように、たとえ大切な家族でもストレスになり得る。これを広く知ってもらうために古田氏は、「家族をストレスだと感じても良い」というメッセージを、メディアを通じて心理臨床家が伝えていくことだと考えている。
「家族といるのがストレスと感じた方は、むしろチャンス。ストレス認知ができているので対処が考えられますし、実際に対処行動ができます」。
認知するためには「ここが気に入らない」と具体的に言語化することが非常に重要となる。それには家族と話し合う時間を作ることが有効だが、「これがなかなか難しい」と古田氏。共働きの主婦ともなれば、とくに忙しいだろう。
そこで古田氏は、あえて職場の習慣を自宅に持ちこみ「家族会議」の時間を明確に作ってしまうよう提案する。ホワイトボードを用意し、日頃感じている互いへの思いをぶつけ合う時間にする。
「かっちり時間を決めてルール化するより、議長など役割を決めて遊びながら楽しめると良いですね。イラついた行動があったとして、いざ話をしてみると実は相手には悪気がなかったり、勘違いしていたと気付けたりします」
家族へのイライラはごく自然
古田氏に、主婦が日常生活で気軽に息抜きできるおすすめの方法を聞いた。
まず挙げたのは、「昔できた特技に再チャレンジ」。かつて習っていたピアノを弾くなど、「昔取ったきねづか」が良い。自己肯定感を高める狙いだ。
次に、「新しいことにチャレンジ」。資格試験に挑戦する、外国語を学ぶ、読書をするといった新たな学習に取り組む時間を作ることも、息抜きに。家族と距離を置き、時間と空間を分けてひとりで取り組むほか、子どもや夫と一緒にチャレンジを楽しむのもよい。
古田氏によれば、ともに取り組む中でも意見が食い違い、ケンカになるケースもある。ただ、
「長く一緒にいれば、親しい中でも対立することは当然あります」
家族に対してイライラするのは、決して誰かが悪いからではない。ごく自然なことなのだ。
(J-CASTトレンド 宮崎くる澪)