インド「変異株」が怖い 「空港で抗原検査」感染者がすり抜けていたら
インドで流行している新型コロナウイルスの「変異株」が、国内で見つかるケースが増えている。加藤勝信官房長官は2021年4月26日の記者会見で、インド変異株が同日までに日本国内で21件確認されたと明らかにした。
インドから日本へ入ってきている理由とは。会見では21件のうち「空港検疫で20件、国内で1件」検出されたと発表されている。「水際対策」に問題はないのか。
空港検疫で「抗原検査」はリスク
例えば、成田空港の検疫所で行われている「抗原検査」は、「PCR検査」とは異なる。厚生労働省が公開している動画を見ると、漏斗(じょうご)に唾液を出して検体を採取する方法だとわかる。日刊ゲンダイの4月26日付記事によると、「PCR検査は検体中に5個以上のウイルスがいれば、陽性を感知するが、抗原検査では100個以上必要だ。その分、精度が劣る」という。西武学園医学技術専門学校東京校の中原英臣校長のコメントだ。
さらに中原校長は、無症状の陽性者はウイルス量が少ないため、抗原検査で陰性となる「偽陰性」が少なくないとし、空港検疫で抗原検査を採用することのリスクを指摘している。抗原検査をすり抜けた変異株感染者が入国して、「既に感染を広めていてもおかしくない」との談だ。
厚生労働省の公式サイトで4月26日に発表した、最新の「新型コロナウイルス感染症の患者等の発生について(空港検疫)」に興味深いデータがある。海外から空港に到着した乗客を対象とした検疫により、新型コロナウイルスの患者2人、無症状病原体保有者14人、計16人が報告されているが、圧倒的に「無症状」が多い。なお、16人中10人の行動歴が「インド」だが、変異株に感染しているかは不明だ。
「なぜ全部PCRにしないのか」
きょう4月27日放送の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)でも、インド変異株と空港検疫の問題が取り上げられた。現状、インドから日本には「特段の理由がない限りは入国できない」ものの、入国する場合は以下の検疫体制が取られる。
(1)出国前に検査し陰性証明
(2)入国時に空港で抗原検査
(3)陰性なら(自宅などで)14日間待機要請
「変異型流行国・地域」から入国する場合は、更に厳しい対応だ。
(1)出国前に検査し陰性証明
(2)入国時に空港で抗原検査
(3)指定場所で3日間待機
(4)PCR検査実施
昨今、インドは新型コロナウイルスの1日の感染者数が連日30万人以上に上り、深刻な状況にあるが、「変異型流行地域」には指定されていないという。
同番組のレギュラーコメンテーターの玉川徹氏は「何で入ってくるんだろう?空港で検査してるんでしょって」と疑問を投げかけた。そのうえで朝日新聞の記事内容を引用し、「PCRで無症状で陽性となった人でも抗原検査では4分の1見落としちゃうんじゃないかと」と精度を疑問視。「なぜ全部PCRにしないんだろうと、前から思っている」とコメントした。
日本ワクチン学会理事の森内浩幸・長崎大教授は「PCRだと抗原検査に比べて時間がかかるので、その間空港に留め置くのが、それはそれで面倒なのかもしれない」と説明。ただ、感度の問題を考えると「できればやはりPCR」が望ましいとしつつ、より精度が高く、かつ短い時間で検査が行えるもので置き換えるのも、やり方の一つだとした。
コロナ死者1万人超
新型コロナウイルスに感染したことが原因で亡くなった人が、4月26日に全国累計1万人を超えた。4月25日に東京・大阪・京都・兵庫で緊急事態宣言が発出されたものの、宣言地域外近郊の居酒屋や施設に集まり、賑わう人の姿も多く見られている。
空港での抗原検査をすり抜けた変異株感染者と、いつ、どこで接触するかはわからない。感染拡大に備え、ことしのゴールデンウイークも「おうち時間」を満喫するのがよさそうだ。