「コロナ死者1万人」数字以上の怖さ インフルエンザや交通事故にはない
新型コロナウイルスに感染したことが原因で亡くなった人が、2021年4月26日に全国で累計1万人を超えた。特に今年に入って急増している。この人数は、他の病気などの死者数と比べてどれくらいのインパクトを持つのか――。
交通事故死の約3倍のペース
厚生労働省が2021年2月に公表した人口動態統計(速報)によると、日本で20年に死亡した人は138万4544人。前年より9373人(0.7%)減った。減少は11年ぶりだという。コロナで死んだ人が増えたはずなのに、なぜ、と思う人もいるかもしれない。
日経新聞によると、肺炎(新型コロナなどを除く)の死者が約1万2000人、インフルエンザが約2000人減っていた。これは、新型コロナの感染対策としてマスク着用や手洗い、手指消毒などが広がり、他の細菌やウイルスが流行しなかった影響だとみられるそうだ。
では、そもそもインフルエンザで亡くなる人は年間どれくらいなのだろう。一時期、コロナの年間死者よりもインフルエンザの方が多いなどと言われたこともあった。
厚労省によると、インフルエンザによる直接の死者はそれほどでもないが、間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡者も含めて推計すると、1万人前後になるようだ。
ちなみに交通事故の死者も、かつては年間1万人を超えていた。しかしながら車や道路の安全対策が進んで最近は3000人程度にまで減っている。自殺は3万人台が続いたが、近年は2万人ほどに減った。
二年目なのに感染者が増えた
コロナの死者は、概数でいうと、現状では自殺者の半分程度で、インフルエンザ並み。交通事故の約3倍――こんな数字が浮かび上がる。
だが、こうした総数の比較だけではコロナについては不十分だ。なぜなら、交通事故やインフルエンザや自殺では医療崩壊が起きないからだ。
多くの医療関係者が指摘するコロナの恐ろしさは、感染力が強く、症状が急変することだ。人工呼吸器をつける、あるいは集中治療室(ICU)入室する、といった患者が多い。致死率は国や地域で異なるが、インフルエンザよりも相当高いといわれている。一人の患者にかかる医師や看護師なども多く必要で、それゆえ患者が増えると医療崩壊が起きやすい。
そして何よりも不気味なのが、新種ウイルスが次から次へと登場することだ。「二重変異ウイルス」による感染爆発が起きたというインドでは、連日30万人の感染者が出て混乱が続いている。
日本の死者数も、昨年末段階では3500人ほどだったが、今年に入ってから急増した。コロナ禍は、鎮静まで3年かかったという20世紀初頭のスペイン風邪と似ているといわれる。当時と違って、ワクチンという対応手段があるものの、日本ではまだ行きわたらない。感染二年目に入って、かえって患者も死者も増えているのが現状だ。