SMAP、嵐にSnow Man 「ジャニーズの哲学」は半世紀前に固まっていた
「嵐」は活動休止したが、Snow ManやSixTONESなど男性アイドル人気は相変わらずだ。本書『ニッポン男性アイドル史 一九六〇 ― 二〇一〇年代』 (青弓社ライブラリー)はこの半世紀余りの男性アイドル史を学究的な視点から振り返ったもの。2021年3月末の刊行。いまや「おばあちゃん」と呼ばれる世代も、実は少女のころはアイドルに熱中していたことがわかる。
「王子様」「不良」「普通の男の子」
日本で「アイドル」が大々的に登場するのは1960年代の半ばすぎ。その少し前、50年代半ばすぎに米国ではエルビス・プレスリー、60年代に入るとビートルズが世界を席巻する。テレビがアイドルを生み出す時代になり、日本ではグループサウンズ(GS)が大人気。コンサートでは多数の女性ファンが失神する騒ぎまで起きた。
本書は、60年代後半のグループサウンズブームや、同じころにデビューしたフォーリーブス、70年代の新御三家、学園ドラマの俳優、80年代のたのきんトリオ、チェッカーズ、さらにはSMAPや嵐などの国民的男性アイドルまで、多岐にわたる彼らの足跡を、「王子様」「不良」「普通の男の子」というキーワードをもとにたどる。
「第1章? GSとジャニーズ」では「『不良』だったGS、『夢』を追ったジャニーズ」という枠組みで、「『王子様』フォーリーブスとジャニー喜多川の哲学」を分析している。ジャニーズのアイドル・コンセプトや戦略が、60年代末にすでに固まっていたことがうかがえて興味深い。
グローバル、ボーダレス化
著者の太田省一さんは1960年生まれ。社会学者・文筆家。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本、お笑い、アイドル、ネット動画など、メディアと社会・文化の関係をテーマに執筆活動を続けている。
著書に『平成アイドル水滸伝――宮沢りえから欅坂46まで』(双葉社)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東――「番外地」テレビ局の生存戦略』(東京大学出版会)、『テレビ社会ニッポン――自作自演と視聴者』(せりか書房)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)、『中居正広という生き方』『社会は笑う・増補版――ボケとツッコミの人間関係』(ともに青弓社)など多数。
本書はDA PUMP、EXILEという「新しい『不良』アイドル」、NEWS、関ジャニ∞、KAT-TUNという2000年代以降のジャニーズ、さらにはBTSなどアイドルのグローバル、ボーダレス化にも触れている。
青弓社は図書館関係や社会学などの書籍が多い硬派系の出版社だが、アイドル関連本で、『アイドル論の教科書』、『アニメと声優のメディア史――なぜ女性が少年を演じるのか』なども刊行している。