虫、一緒に食べない?ミールワームとか、ハチとか 新たな世界が見えちゃうよ
虫を食べる。
え、なにそれ、どういうこと? 私、虫を触るのはおろか、口に入れるなんて...。ただ「タンパク質が豊富で、体に良い」と聞くと、ちょっと興味が湧いてきた。「昆虫単体」じゃなく、おいしい料理と一緒に食べればいけるかも。
そこで、2021年5月に東京・渋谷にオープンする新レストラン「EAT for E」のメニューを試食させてもらうことにした。ミシュラン1つ星店「sio」監修の「サステナブルプロテインガパオ」だ。調理済みのハチ、ミールワームと一緒に頂くらしい。本当にいいのか、私。
粉末よりも「まんま」を勧められ
まず、上部にトッピングされた目玉焼きが印象的な、具だくさんのガパオライス。「EAT for E」を手掛ける、b-monster(東京都港区)代表取締役・塚田眞琴さんの厚意で、店舗オープン前に入手した。これだけで食べたい。いや待て、「主役」のご到着がまだだ。
「サステナブルプロテインガパオ」これだけで食べたい
「EAT for E」では、(1)調理済みの昆虫を「パウダー状にしたもの」、(2)昆虫の見た目がわかる状態のもの、から好きな方を選んでフードメニューと一緒に食べられるそうだ。
私「(食い気味に)じゃあ、ぜひ『イチ』...」
塚田さん「『2』の方が昆虫の食感が楽しめますよ」
私「(マジか、これは2で頂く流れじゃないか)」
b-monsterの塚田眞琴代表取締役
ちょっとだけ涙で目が曇った私の前に、塚田さんが二つのケースをそっと置いた。
以下、なかなか刺激が強いので皆さまお覚悟を。大量の昆虫、出ます。
モザイクをかけてもなかなかの見た目
...念のためモザイクをかけましたが、次こそ出ますよ! ニガテな人は今のうちに引き返して!
(左から)調理済みのミールワーム、ハチ
うわあ。思わずそんな声が出た。まんまじゃないか。「やっぱり(1)でお願いできませんか」と言いそうになったが飲み込む。箸でつかんで、目を閉じて、一気に口の奥で噛んで飲み込む...そんなイメージトレーニングしてきたつもりが、何の役にも立たなかった。そもそも、顔を近くに寄せられない。怖い!
一匹一匹は指でつまめるほど小さいのに、集まるとすごい迫力なんですけど。
「ちょっと一杯いかが」のノリで
全部で何匹か、数える気にもならないボリューム...塚田さん、奮発してくれてありがとうございます(滝汗)。でも待って、食べられる気がしません!
私「これ...生きてないですよね(踊り食いはさすがに)」
塚田さん「はい、大丈夫ですよ。私も初めて見た時はちょっとびっくりしましたが。昆虫食は『高たんぱくかつ低脂質』で、地球環境にも優しいんですよ。たんぱく質は筋肉だけでなく、髪や爪、皮膚の材料でもあるので、日々の摂取が欠かせない栄養素です」
ビビリまくる私に、笑顔で昆虫食の魅力を語る塚田さん。さわやかスマイルだ。はい、頭では理解できます。でも、震えが止まらない。
塚田さん「いきなりハチを食べるのは厳しいと思うので、まずはミールワームどうですか」
ちょっと一杯いかがですか、と酒を勧めるようなノリでケースを差し出してくる。
記者にはこんな感じに見えました(ご本人ではありません)
「素手でいくんですか?」
とは聞けずに、意を決してミールワームを一匹つまんだが、筋張った固い感触が指先に走った瞬間、放り出してしまった。今、動いた!? 動いてない!?
「まずはミールワームどうですか」とは...
塚田さん「おおお (笑) 大丈夫ですか」
私「すみません、ずびばせん(錯乱)、本当にすみません(ペコペコ)次はちゃんと食べます」
「昆虫食を食べてみたい」なんて言い出したのは誰だ! 編集長か! いや私だ!(本当は編集長)
震える手でもう一度、ミールワームをつまむ。塚田さん曰く「チーズスナックみたいな味がする」らしい。この見た目からとてもそんな味が想像できませんが、信じますよ!
ぱくっ。
...サク...サク...
「な、なんだ!」
私「...本当にチーズみたいな味がしますね」
塚田さん「おいしいですよね」
ミールワームを通じて塚田さんと解り合った私。一口目はサクッとした、スナック感のある軽い口当たりだったが、後味は濃厚。たった一匹だけでもはっきりとした味だ。酒のつまみになりそう。お酒を勧めるノリだったのは、こういうことか!
ハチは...ちょっと勇気が出ないので、ガパオライスに混ぜて頂くことにします。お許しください。
私、今、体に良いものを食べてる
というわけで、会社でミールワーム&ハチ乗せ「サステナブルプロテインガパオライス」を作った。どのくらいの昆虫を振りかければよいかわからず、かなり及び腰だったのは秘密だ。
とりあえず二種とも振りかけてみた、の図
この時点で私、ちょっと泣きそうになっていた。いや、声をあげて泣いた。たぶん、振りかけ方が悪い。あと量が多すぎたかも。あんなにビビっていたくせに攻めすぎた...なぜ...。
いや、混ぜればいける! 昆虫の味がおいしいことは既にわかっているんだ!
じゅうぶん混ぜたおかげで、ビジュアル的な抵抗感はかなり薄れた。これなら食べられる。スプーンに多めに盛り付けて、一気にかぶりついた!
ミールワームやハチと混ぜたガパオライス
ボリボリボリ、パリパリパリ、サクサクサク。口の中で色々な音が鳴り、いくつかの食感が入り乱れる。甘辛なガパオライスの風味に、まろやかさを加えているのはミールワームだ。 サクサク食感はハチ。ミールワームほど、しっかりとした味はしないが、嫌なクセもない。
「いける、いけるぞ!」
食べるのに勇気が必要だったのは最初の三口くらいまでで、あとは普通の食事と同じように箸が進んだ。私、今、体に良いものを食べてる。うふふ...と思うと、ちょっとテンションも上がる。強いて言えば、食べていると歯ぐきにハチの羽や足と思しきナニカが刺さって、たまにちょっと痛い(ご一緒に想像してみてください)。
完食する頃にはすっかり慣れて、使いきれなかったミールワームをポリポリ、仕事の合間に食べた。意外な発見だがコーヒーにもなかなか合う。
忘れてはいけないのは、食べた後に必ず口を拭いて、歯を磨くこと。ナプキンで唇を押さえたら、ハチの足が取れた。虫の体の一部をくっつけて取材しに行ったら、相手をきっと驚かせるだろう。「虫、食べたんですか」と聞かれたら、「おいしいですよ」と答えるけれども。
「エビの尻尾とGの羽は同じ成分」
「b-monster」は、暗闇ボクシングフィットネス事業で知られる会社だ。どうして「昆虫食」の提供に乗り出したのだろう。塚田さんは、驚きのエピソードを明かした。
塚田さん「以前、『エビの尻尾とゴキブリの羽は同じ成分』というニュースを見かけたことがきっかけですね。友人は『もうエビの尻尾食べられない』と言ったんですが、私は『へえ、じゃあゴキブリの羽も食べられるんだ』と思ったんです」
私「すごいポジティブシンキングですね...」
塚田さん「人口増に伴う肉や魚の消費量増加などの影響で、2030年頃には『たんぱく質の需給バランスが崩れる』とされています。それなら『食べる選択肢が増える』ように考えた方がいいなと」
おかげで私の食の選択肢に「昆虫」が加わった。今度はどの虫、食べちゃおっかなー。