黄砂で新型コロナ症状悪化しないか 日本に飛来でPM2.5との「三角関係」心配
中国・北京で黄砂が大気を覆った。複数の報道によると、2021年3月15日は過去10年で最悪の状況だったという。気象庁の黄砂情報サイトによると、黄砂は日本でも16日21時までに東北地方などに飛来すると予想されている。
気になるのが、今後の健康への影響だ。黄砂については人の呼吸器への影響が報告されることがあるが、新型コロナウイルスとの関連性はないのか。
マウス実験で感染や重症リスクの恐れ
黄砂による新型コロナウイルス感染症への直接の影響について研究機関などによる報告例は、調べた限り見つからなかった。一方で、黄砂と同様に空気中を漂い、大気汚染物質とされるPM2.5(微小粒子状物質)については、新型コロナの症状への影響が指摘されている。
米ハーバード大学公衆衛生大学院は2020年5月、新型コロナウイルスとPM2.5に関する研究の結果を発表している。その中では米国内の各地域の大気汚染レベルと、新型コロナウイルスによる死亡者数のデータを比較した。すると、PM2.5に長期的にさらされることで新型コロナウイルスによる死亡率が上昇することがわかったという。
さらに京都大学の高野裕久教授(環境医学)は、マウスを使った実験を経て、PM2.5によって新型コロナウイルスへの感染や重症化が生じやすくなる恐れがあるとの研究結果を21年2月4日に発表している。
では黄砂とPM2.5の関連性は何か。
黄砂とPM2.5の関係
環境省公式サイトで公開されている「微小粒子状物質(PM2.5)に関するよくある質問」によると、黄砂にもPM2.5の大きさの基準である「2.5マイクロメートル」以下の粒子が一部含まれるため、黄砂の飛来によりPM2.5の観測量が上昇することがある。
さらに「黄砂が輸送される過程で、大気汚染物質の発生が多い地域を通過する場合、これらの物質とともに日本へ飛来すること」もあるという。
黄砂によりPM2.5も日本へ飛んでくる。そのPM2.5がコロナ感染に悪影響――。前述の京都大学の研究は動物実験の段階だが、「もしかしたら」と考えてしまうかもしれない。
今回北京を黄砂が覆った際にも、市内の空気中に高い濃度のPM2.5が観測されたと米CNNなどが報じている。