コロナ感染で自宅療養、仕事できず後遺症も 「保険金」は受け取れるか
新型コロナウイルスでは、自宅療養を強いられることが少なくない。そもそも医療体制のひっ迫で、医療機関の診察を受けるまでが一苦労だ。
2021年2月8日の朝日新聞には、医者に診てもらえないまま、自宅療養を強いられた女性の話が出ていた。保健所の電話は3日間かけてもつながらない。総合病院では検査を断られる。かかりつけ医からは「発熱した人は診ない」と言われた。結局、何の診断も受けることができなかった。のちに、仕事に復帰できたが、休みがちなのでクビになり、いまも「だるさ」などの後遺症が残るという。
他人ごとではない「自宅療養」
この女性は極端な例かもしれないが、今や「自宅療養」は他人ごとではない。そのとき民間の「生命保険金」はどうなるのか。
この問題では日経新聞がいち早く、2020年4月14日に「新型コロナで自宅待機 保険金はもらえる?」という記事を公開。「症状も強くなく、極端に言えば家で寝ていることしかできない場合はどうなるのか?」と素朴な疑問を投げかけている。保険会社の回答は、「医療機関の証明があれば入院給付金をお支払いします」(明治安田生命)。
生命保険文化センターのサイトによると、「『医師の指示により、臨時施設(軽症者を治療するホテルなど)または自宅で療養した場合、その療養期間についても入院給付金を受け取れる』としている生命保険会社が多くなっています」(20年9月時点の情報)。
「メットライフ生命」のサイトには「オンライン診療や電話診療は、通院給付金の支払対象となりますか」という質問も掲載されている。答えは、「はい。医療機関への通院に代えて自宅等における、医師によるオンライン診療および電話診療についても、すべての通院関係の保障における通院としてお取り扱いし、通院給付金のお支払い対象とします」。
裏切られる国民
以上の例からも分かるように、「自宅療養」も「オンライン診療」も、保険金が出るのは、あくまで「医者の関与」が前提のようだ。
ちなみに、運悪く亡くなった場合はどうか。死亡保険金を受け取れるのは当然だが、先の日経の記事によると、増額の可能性がある。「災害割増特約」といって交通事故や災害、感染症などで死亡した際、死亡保険金に一定額を上乗せする特約がついている場合だ。金融庁の要請もあって、新型コロナも割増金の対象とする保険会社が増えているという。
例えば1000万円の死亡保険金が支払われる定期保険などに最大1000万円の災害割増特約をつけていれば、倍の2000万円が受け取れる。生保大手3社(日生、明治安田、第一)だけでも対象者はおよそ延べ750万人にのぼるという。 それにしても、上記の朝日の記事の例のように、医者に診てもらえない、というのは尋常ではない。ほとんどの人は、多額の国保や健保の支払いを続けているわけだから、国に裏切られたと感じることだろう。
ちなみに、「保険市場」というサイトによると、会社員や公務員が、業務外で感染し、連続する3日間を含み4日以上自宅療養となった場合は、傷病手当金の支給対象となる。業務中に感染したと認定されれば、労災保険から給付金が受け取れるという。
また、「国民健康保険に加入している被用者(給与の支払いを受けている人)」についても、厚労省の指導で、「新型コロナウイルス感染症に感染等して就労することができず給与を受けられない場合、傷病手当金を支給します」(大阪市)としている自治体が多い。
「医療崩壊」に違和感
保険金がもらえるかどうかはともかく、「医療崩壊」という想定外の現状に対するいら立ちや疑問の声も増えている。そもそもなぜ人口当たり世界一の病床を持つ日本で「医療崩壊」が起きるのか。 J-CASTトレンドで紹介した「医療崩壊は本当に起きるのか 現役医師が『文藝春秋』で指摘した『弱点』」で医師・医療経済ジャーナリストの森田洋之さんは、日本の医療システムが、緊急事態に臨機応変に対応する「機動性」に欠けていることを強く指摘していた。
「霞ヶ関官僚が読む本」でも同様の指摘があった。「過去には医師優遇税制も受けて構築されてきた優秀な医療体制のはずが、業界団体である日本医師会は、危機時の供給不足について反省を示すどころか、上から目線で国民に我慢を呼びかける始末」と、霞が関官僚の視点から、「医療崩壊」への違和感を率直に語っている。そして、20年1月23日付の日経新聞が、「公的病院や大学病院を軸に施設が整った病院をコロナ重症者の治療拠点とし、専門医を集める必要がある。コロナ以外の重症者の受け入れ病院と役割分担すれば医療資源を効率的に活用できる」と提言していることを高く評価していた。
最近では、スカイマーク会長の佐山展生さんの「コロナ闘病記」も話題になっている。Business Insiderによると、佐山さんは、幸い入院できたが、コロナ特有の病状急変には苦しんだという。「軽症だから自宅待機というのは、家庭内感染を増やして下さいと言っているのと同じ」「高熱のある人の在宅とホテル療養は、極めて危険」と警告。1兆円を超えるGoToトラベル事業予算の半分だけでも、医療関係者の支援と休業や時短で経営が圧迫されている人たちに回すべきではないかと国の政策転換を訴えている。