「呪術廻戦」はポスト「鬼滅の刃」か プロが分析「ヒットの秘密」(前編)
2020-12-26 07:00:00
漫画家・芥見下々さん作の「呪術廻戦」。「呪い」をテーマとしたバトル漫画で、書店では単行本の売り切れが続出。テレビでも取り上げられ、話題だ。
J-CASTトレンドは、漫画のクチコミサービス「マンバ」(東京都千代田区)に、「呪術廻戦」の人気の秘密を聞いた。2回にわたってお届けする。
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著者の感性で描き生まれた「王道で新しい」読み味
「マンバ」はあらゆるマンガ情報を網羅することを目指し、クチコミとランキングで日々情報提供するウェブサービスだ。呪術廻戦は、2020年12月7日時点でマンバに登録されている全てのマンガ作品の中で、週間・月間ページビュー(pv)数ともに10位以内という人気作品となっている。
――マンバの「呪術廻戦」のページや投稿されたクチコミは、いつ頃から読まれるようになりましたか。
マンバ 実はこれまで3回、同作品の注目が高まったタイミングがありました。
まず、単行本第1巻が発売された2018年7月。「週刊少年ジャンプ」誌上で第19話が掲載された7月第4週は、人気キャラクター「七海建人」の初登場回でもあり、目に見えてpv数が増加しました。
2回目が19年11月~12月で、ジャンプの連載で「渋谷事変」が始まった時期です。アニメ化が決定、初の単独複製原画展の開催と、大きなイベントが重なった時期でもありました。そして3回目が20年10月のアニメ放送開始後から、現在にかけてです。11月最終週には、「呪術廻戦」がマンバに登録されて以来、過去最大のpv数を記録しました。
――人気のポイントはどこにあるのでしょう。
マンバ 呪術廻戦には、呪術を用いた巧みなバトルや、登場人物の発言など、1990年代以降に大ヒットしたあらゆるジャンプ作品の影響を垣間見ることができます。20代の著者の感性で描くことで生まれる「王道で新しい」読み味。それが著者と同年代で、同じ作品を読んで育った層に特に刺さっているのではないでしょうか。また、2018年の東京が舞台で、現実とリンクしています。物語の佳境ではハロウィーンの渋谷駅周辺を舞台にバトルが繰り広げられました。現在もそのバトルは続いており、多くのファンが毎週進展を見守っています。
「鬼滅の刃」との共通点は
――同じく「少年ジャンプ」で連載した「鬼滅の刃」は、社会現象になるほど大ヒットしています。呪術廻戦には、鬼滅の刃に通じる要素はみられますか。
マンバ 両者の主人公が他者への思いやりという「美徳」を備えている点です。鬼滅の刃の主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)は常に穏やかで心優しく、困っている人がいれば当たり前のように手を差し伸べるような少年です。常に礼儀を忘れず他者の気持ちに寄り添い、大切な家族を鬼に惨殺されたにも関わらず、とどめを刺された敵の鬼すら哀れむ姿は印象的です。そして炭治郎と同じように、呪術廻戦の主人公・虎杖悠仁(いたどりゆうじ)もまた、他者への思いやりの心を持っているのです。
虎杖は、唯一の家族であった祖父を病気で亡くし、その直後に初めて呪いの恐ろしさを目にします。呪われた人間は、本来であれば決してありえない尋常ならざる姿となり、運が悪ければ死に至ります。自分の周囲の人にも祖父と同じように「正しい死」を迎えてほしいと、自らの意志で呪術高専に入学しました。
ムードメーカーで精神・身体ともに強靭(きょうじん)な虎杖は、呪いの被害に巻き込まれた人々の悲しみに寄り添いともに胸を痛める優しい少年です。品行方正な炭治郎とは異なり、未成年が本来立ち入ってはいけない遊技施設に行くような一面もありますが、「他者に思いやりを持って接する」という美徳を兼ね備えているところが炭治郎と共通していおり、これが2人の非常に大きな魅力です。
(後編に続く)