新型コロナ「変異種」正しく知ろう 遺伝子変異は「HIV」でも頻繁に発生
英国政府が2020年12月23日、新型コロナウイルスの変異種が確認されたと発表した。感染力の強さから警戒感が高まっている。日本政府は、12月24日以降日本人以外の英国からの入国を一時的に停止している。
東京大学保健センター公式サイトによると「一般にウイルスは増殖にあたり、遺伝子の突然変異が起こりやすい」。新型コロナウイルスも、同様の性質を持つ可能性がある。コロナウイルスと同じ1本鎖RNA を持つウイルスである「HIV」では特に、遺伝子変異が高頻度で起こることが知られているというのだ。
米誌「サイエンス」で説明された「変異型」の特徴
なぜ「遺伝子変異が高頻度で起こる」ことが問題なのか、前述の東大保健センターのサイトには、こう説明がある。
「遺伝子を元に作るタンパク質の構造に変化が起こりえますが、治療薬やワクチンはウイルスの作るタンパク質(酵素や膜上のタンパク質)を標的にする事が多く、この構造が変わるとこれらの効果が弱くなる、効かなくなる事が想定される」
これまでにも、こうしたことを加味した薬やワクチンがウイルス治療に開発されてきた経緯があるため、「今回の新型コロナウイルス治療においても同様と考えられる」という。
では新型コロナウイルスが変異すると、具体的にはどんなことが起こるのか。
東京大医科学研究所の河岡義裕教授や米ノースカロライナ大などの研究グループが行った動物実験の結果が、米科学誌「サイエンス」電子版に2020年12月18日に掲載されている。従来型と変異型のウイルスそれぞれに、ハムスター8匹ずつを感染させ、「感染していないハムスター」への感染の仕方を調べたものだ。これによると、変異型の方が感染するのが早いが、従来型と変異型とで「症状の重さ」に差は見られなかったという。
また従来型の新型コロナウイルス用に開発しているワクチンであっても、変異型に効果が期待できるという。ただ、油断はできない。「感染増加と病原性の関係は依然として複雑であり、年齢、性別、その他の併存疾患(編注:別の病気を併存している状態のこと)の影響を受ける可能性がある」ためだ。今後も感染動向を注意深く見守る必要がある。
感染が繰り返されると変異の可能性も高まる
変異種で怖いのは、新型コロナウイルスだけではない。
厚生労働省は「鳥インフルエンザから新型インフルエンザ」への変異にかねてから警鐘を鳴らしている。鳥に感染するタイプであっても、他の動物にも感染するようになることがあるのだ。厚労省公式サイトでは、新型インフルエンザウイルスの発生経緯について、こう言及している。
「鳥から人への感染が繰り返されると、ウイルスが人の体内で増えることができるように変異してしまい、さらに人から人へ容易に感染できるように変異する可能性もあります。人と鳥のインフルエンザウイルスが豚のなかで、いわば合体することもあるといいます」
感染が繰り返されると、変異の可能性も高まるようだ。