冬場のお風呂「ヒートショック」のリスクは高齢者だけではない 飲酒、肥満も引き金に
寒い季節ほど恋しくなる「お風呂」。冷えた身体を熱い湯で温める時間は格別だ。
ただ、冬場の入浴は一歩進むと死亡事故につながることも。とくに高齢者には注意が必要だ。
湯の温度は41度以下、湯船に浸かる時間は10分以内に
厚生労働省の「人口動態調査」によれば、高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数と、居住施設の浴槽での溺水による死亡者数は毎年高い水準で推移している。2019年の家及び居住施設の浴槽における死亡者数は4900人。11年以降は「交通事故」による死亡者数を毎年上回っている。
消費者庁は公式サイト上で、11月~4月の冬季を中心にこうした事例が多く発生していると説明する。とくに冬場の入浴には「ヒートショック」の危険もあるため注意が必要なのだ。ヒートショックは、急激な温度の変化で身体がダメージを受けることだ。急激な温度差によって血圧が大きく変動し、失神や脳梗塞などを引き起こすことがある。もし、浴槽の中で意識を失ってしまった場合、溺死のリスクは格段に上がる。
ヒートショックを防ぐには何が必要か。東京ガスなどが協賛し、ヒートショックに関する理解と予防啓発を広める活動「STOP!ヒートショック」によると、対策として入浴時の血圧の変動をなるべく起こさないために、入浴前に浴室や脱衣室を暖めておくことが重要だという。
湯船に湯を沸かすときは浴槽のフタを外し、浴室内に温かい蒸気を行き渡らせる。シャワーの温度や湯の温度は41度以下に設定し、熱い湯を急に体へかけることは避ける。湯船に浸かる場合は10分以内にとどめることも有効とのこと。さらに、浴槽から出るときはゆっくりと立ち上がり、いったん浴槽の縁に座るなどして呼吸を整えることも急な血圧の変化を防ぐのに効果的だ。
アルコール摂取後はリスクが高まる
ヒートショックは、高齢者に限って起きるものではない。
日本気象協会が運営する天気情報サイト「tenki.jp」の記事によると、ヒートショックは若者でも注意する必要がある。
中でも「熱いお風呂(約42℃以上)に入るのが好き」、「飲酒してからお風呂に入ることがある」、「太っている(肥満)」、「高血圧、糖尿病、動脈硬化などの病気がある」、「呼吸器官に問題がある」といった項目に該当する人は注意が必要だという。
前述のSTOP!ヒートショックも公式サイト上で「高齢者だけにかかわらず、アルコールを摂取しているときや食後すぐの入浴は体に負担がかかり、ヒートショックのリスクが高まるため、年齢を問わず避けるべき」としている。さらに、精神安定剤や睡眠薬などを服用した後の入浴は、ヒートショック時の意識喪失による溺死の可能性を高めるそうだ。
日本気象協会は、その日の気象予測情報に基づき、家の中でのヒートショックのリスクを示した「ヒートショック予報」を公開中だ。ヒートショックのリスクを地域別に分けて掲載している。