地球と人類社会について話し合う「東京フォーラム」 新型コロナもテーマに
東京大学は韓国の学術振興財団「Chey Institute for Advanced Studies」と共催で、2020年12月3日から4日にかけて「Tokyo Forum 2020 Online」(東京フォーラム)をオンライン配信で開催した。
東京フォーラムとは、地球と人類社会が直面する課題について、情報や意見を交換するシンポジウム(討論会)だ。「Shaping the Future(未来を形作る)」を全体のテーマとして、2019年から10年にわたって開かれる。第2回となった今回のテーマは「人新世におけるグローバル・コモンズの管理責任」だ。
地球環境の保護に向けて何ができるか
人新世とは、人類が地球環境や生態系に影響を与えてきたことで新たに入ったとされる地質時代の名称。そして「グローバル・コモンズ」とは、人類が共有する地球環境のことを指す。この「グローバル・コモンズ」の管理や保護に向けて議論が行われた。
フォーラムは東京大学総長・五神真氏と韓国SKグループ会長のチェ・テウォン氏による開会挨拶からスタート。その後「ポツダム気候影響研究所」所長のヨハン・ロックストロム氏や、「国連気候変動枠組条約」の前事務局長を務めたクリスティアナ・フィゲレス氏ら識者が登壇した。
3日のパネルディスカッションでは、2030年までの10年間で「グローバル・コモンズ」の保護に大きく取り組まなければ、「地球が制御不能」になるということが強調された。また、「新型コロナウイルスはグローバル・コモンズに大変革をもたらすか」もテーマとなった。その中では新型コロナ禍の影響により、打撃を受けた世界経済をいかに回復し、いかによりよく「グローバル・コモンズ」を管理するかについては課題が多いということも指摘された。
一方で、「パンデミックによる都市封鎖で環境汚染が止まったメリットを市民が実感した」という想定外のプラス面も話題になった。また、新型コロナが転換点となって、「グリーン・グロース」(環境保全と経済成長の両立)への意識が世界で向上しつつあることもわかった。
4日にも行われたディスカッションの最後には「グローバル・コモンズの責任ある管理のために、データは何ができるか?」が主題となった。急速に進化したSNS、そしてビッグデータやAIをいかに活用できるか、という内容だ。
テクノロジーを用いることで森林伐採の効率化などもできるが、一方でネット環境の違いで人々に格差が生じ得るというリスクもある。最終的には、テクノロジーを活用しながら人と地球がバランスよく共存することで、お互いのシステムを保ちつつ「幸福に暮らすことができる」という提案でディスカッションは幕を閉じた。