エレコムは「宣伝じゃない宣伝」でファン獲得【ツイッターは仕事!企業公式「中の人」集合(13)】
パソコン・デジタル機器関連製品の開発、製造販売を手がけるエレコム(大阪市)。「本日もよろしくお願いいたしマウス」、「さようなLANケーブル」、といった、製品をもじった親しみやすい挨拶ツイートが特徴だ。
2020年12月9日現在、約11万フォロワーを抱える。パソコン周辺機器を扱うバッファローやサンワサプライなどの同業他社とも日頃親しくやりとりし、壁を感じさせない気さくな運用が魅力だ。
「メーカー無派閥」顧客に「認知」されるために
【エレコム(公式)】企業の最新情報や、新商品を実際に自分で使い、画像や動画を通じて魅力や使用方法をわかりやすく説明するツイートをしている。アカウント開設は2016年9月。現担当者が19年5月から、約1年半運用中。
エレコムの担当者は日頃、各種SNS運用をはじめ広報業務全般に携わっている。以前はグループ会社で1年弱ツイッターを運用。その後、当時フォロワー2500人ほどのエレコムアカウント「中の人」に就任した。エンドユーザーとの接点を増やし、「顧客と直接繋がるためのツール」として活用している。
「パソコン周辺機器は、『あのメーカーの商品を買うぞ』と決めて購入に至る人があまり多くありません。そこで、重視しているのが『認知されるための投稿』です。実際に来店して、どんな機器を買おうか迷っている利用者に『そういえば、エレコムって会社がこの商品を紹介していたな』と思い出してもらえたらいいなと」
例えば、新商品紹介ツイート。発表資料の文章をそのまま貼り付けて「買ってください」とPRするのではなく、情報を噛み砕き、短くインパクトのある言い回しを工夫、投稿している。11月24日、USBメモリのような見た目をした「超小型の外付けSSD」を発売した際は、使い方やポイントをまとめた商品紹介動画を添え、
「嘘みたいだろ、これ、SSDなんだぜ・・・」
とつぶやいた。100以上のRT、300以上の「いいね」が寄せられた。
「拡張された接客」の教えを胸に
運用を始めた当初と比べ、担当者は「『エレコムの商品を買いました!』という報告ツイートが増えてきている」と手ごたえを語る。ツイッター検索でユーザーの声を探し、引用RTで感謝を伝え、交流手段の一つにしてきた成果と受け止めている。
時には「使い方がわからず、困っている人」を見つけ、相談に乗ることも。テクニカルな問題はサポートセンターに案内するが、「自分でわかることなら、すぐに答えるようにしています」。実際に、あるユーザーの困り事をリプライで解決したところ、製品購入に繋がった例があった。広報の役割を超え、「営業活動」に一歩踏み込んだ対応を求められる場面も少なくないようだ。
ただ「ガツガツとした営業・宣伝」に踏み込む考えはない。その背景には、運用開始当初に学んだ、ある教えがある。東急ハンズの公式ツイッター担当者がセミナーで明かした「ツイッター運用は、『拡張された接客』」という考え方だ。
「実際の営業現場を見ても、最初から最後まで、ずーっと仕事の話をしている人はいないですよね。重要な話に入る前に世間話をして共感し合ったり、商談の合間に雑談を挟んで緊張を解したり...。ツイッターも同じだと思うんです」
PR色が強い投稿ばかりされたら、見る人は疲れてしまう。
「仕事として情報は発信しつつ『宣伝じゃない宣伝』を心がけるようにしています」