「葬儀では黒マスク着用」という珍説 葬儀社もびっくり、そして真偽が分かった
葬祭では黒マスク着用――。真偽が定かでない「マナー」が2020年9月1日、物議を醸している。「8月の終わりに"通夜葬儀などの場合はマスクも黒にすること"というマナーを見かけた」という投稿を、ウェブメディア「まいどなニュース」が取り上げたことが発端だ。
記事では「謎の葬祭マナー誕生にとまどいの声」との見出しで紹介。ツイッターでは「葬儀でいちいち黒マスク用意してこいとかむちゃくちゃだ」と否定的な意見が圧倒的多数を占めているが、「昨日、友人も黒マスクで葬式行ってたからこれまじなのかも」と、真に受ける人もいるようだ。葬儀社に取材すると、その答えは...。
葬儀社「驚きをもって受け止めた」
「白いマスクを着用している参列者が多いので、黒マスクを着けている方は目立ちますね」
名古屋市にある西田葬儀社の西田祐規さんは、J-CASTトレンドの取材にこう答えた。業務で葬儀参列者と接する機会がたびたびあるが、黒マスク着用者はほとんど見かけないようだ。ただ同社では、葬儀に参列する際のマスクの色を指定していない。黒いマスクしか持っていない場合は、それで参列しても問題ない。
新型コロナウイルス対策として、非着用者が参列した場合にはマスクを渡していると言い、「一般的な白いマスクですが、『黒くなくてよいのか』と尋ねられたことはありません」。
そして、「葬儀で黒マスクを着用する」というネット上のうわさ。西田さんは聞いたことがなく、「驚きをもって受け止めた」と話した。
「喪服が黒」に変わったのは昭和の初め
西田葬儀社の公式ツイッターアカウントはきょう9月1日、「葬儀で黒マスクにする必要はありません。白マスクでご安心ください」と投稿し、「古来からの日本の葬儀の色は白」と説明している。その理由とは。
「白は『悲しみ』や『神聖さ』、『無垢なもの』の象徴です。明治時代以前、喪主は白い裃(かみしも)で葬儀に参列するのが通例でした。ただ昭和初期くらいから欧米式の儀礼文化が入ってきたこと、太平洋戦争の影響で戦没者が増えるに伴って裃の利用頻度も増え、汚れを落とす役割を担う『貸衣装屋』に負担がかかるようになったことから、黒い喪服に変わっていったという経緯があります」(西田さん)
昭和の始まりは1926年のため、「黒い喪服」文化は比較的新しいと言える。西田さんによると、地方によっては今でも白の裃を葬儀の際に着用する風習があるそうだ。「こういった機会に、ぜひ葬儀にまつわる歴史や文化を知っていただけたら嬉しい」と述べた。