豪雨災害の被災地でボランティア課題 「新型コロナ」外からの支援に難しさ
熊本県を中心に九州各地を襲った、2020年7月初旬の豪雨。被害は大きく、いまも断続的に降る雨が復旧活動にあたる人々を悩ませている。
被災者は、水害で壊れた家屋の片づけを一刻も早く進めたい。頼りになるのがボランティアだ。ところが今年は新型コロナウイルスの影響で、各自治体では原則、地元在住者のみボランティアを許可するなど、制限している。支援は長期的に必要だが、今後の人手不足が懸念される。
被災自治体どこも「地元在住者限定」
豪雨災害に見舞われた各地では災害ボランティアセンター(ボラセン)を設置し、ボランティアの受け入れ態勢を整えている。4連休初日の7月23日、熊本県人吉市では朝8時半から大勢のボランティアが集まった様子をNHKが報じた。全員が県内からの参加者だ。
人吉市は、水害で壊滅的な打撃を受けた球磨村と協働でボラセンを開設している。熊本県では八代市をはじめ、被災した各自治体がボランティアを受け入れているが、いずれも県内かその市町村在住者に限っており、事前登録を求めるところもある。大分県日田市、福岡県大牟田市といった他の被災自治体も、ボランティアは地元在住者限定だ。
全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)が6月1日に公表した「新型コロナウイルスの感染が懸念される状況におけるボランティア・NPO等の災害対応ガイドライン」では、基本方針として「支援は、被災した地域内での対応を中心に考え、原則として外部からの人的支援は遠隔での対応が主体となる」としている。また、全国社会福祉協議会の指針として、災害ボランティアセンターは「広域に幅広くボランティアの参加を呼びかける災害ボランティア活動を行うべきではない」と記述している。
記者は2016年4月の熊本地震で、熊本市ボランティアセンターを取材した。当時の記事を振り返ろう。同センターが立ち上がったのは「本震」から6日後の同年4月22日で、「初日は1000人超がボランティア活動を希望してセンターに足を運んだ」とある。また「センター開設当初数日は、800~1000人がボランティア活動に参加。ゴールデンウィークに入ると、受付者数が1000人を超える日も」となっている。5月4日には3582人が集まった。
人吉市社会福祉協議会のフェイスブックを見ると、20年7月23日にボランティアに参加したのは、1208人。八代市では同日、306人と同市社協がフェイスブックで報告している。日によってばらつきがあるが、2ケタ台のときもある。
感染予防と支援活動のバランスをどうとるか
災害支援で実績のある、ピースボート災害支援センター(PBV)を取材した。理事の小林深吾さんによると、熊本県や大分県のパートナー団体と連携して、新型コロナウイルスの感染予防や復旧作業に必要な備品、機材を現地に届けている。現状について、聞いた。
――被災地での復旧作業で、人手は足りているでしょうか。
小林 ボランティアは地元在住者しか募集しておらず、外部から入っていけないのが現状です。皆さん懸命に作業にあたっていますが、地元でカバーできるキャパは既に超えているように見えます。
新型コロナの感染対策はもちろん重要です。しかし(ボランティア不足で)被災した人の家の片づけが遅れると、それだけ避難生活が長引き。厳しい状態に置かれ続けます。これが災害関連死の増加につながることを恐れています。
――新型コロナと豪雨災害という「二重苦」状態で、支援活動の大切なポイントは。
小林 感染予防と支援活動のバランスをどうとるか。現在は、各種の専門知識を持った人材も現地に入って活動できません。行政から「地元の人以外は遠慮してほしい」との要請が出ている以上、これを無視して行くとあつれきが起きる恐れがあります。
被災者の生活再建につながるサポートをどうするのか、考え行動する時期だと思います。
――この「コロナの時代」に誰もが被災者になり得ます。心がけておくべきことは。
小林 ここ数年を見ると、水害の規模や影響が大きくなってきています。「今まで生きてきた中で起きなかった」という災害が発生している地域があります。過去に経験がなくても、これからはいつでも、どこでも災害が起きることを前提に、従来の危機意識を変えていかねばならないでしょう。
(J-CASTトレンド 荻 仁)