「ネコ同士で新型コロナ感染」東大医科研 日本獣医師会「外に放さず室内飼育を」
東京大学医科学研究所の河岡義裕教授らのチームは、2020年5月13日付の米医学誌「New England Journal of Medicine」オンライン速報版で、新型コロナウイルスがネコ同士で感染するとの研究成果を発表した。
東大医科研の発表には、「新型コロナウイルスがネコの間で広がる可能性があることが示唆されました」とある。ネコを飼っている人は多く、ツイッターには不安だという書き込みがある。
接触感染によってネコの間で簡単に感染
河岡教授らのチームの研究では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者からウイルスを分離。ネコの鼻腔内に接種し感染させた。その後、感染したネコとそうでないネコのペアを3組つくり、同居させた。その結果、全てのペアで感染を確認、ウイルスは接触感染によってネコの間で簡単に感染伝播することが明らかになったという。また、感染したネコからは、明らかな症状は見られなかった。
ツイッターでは、研究結果が話題となった。
「ネコ飼ってるから心配になってきた」 「うちの子だいじょぶかな心配」 「ネコ間で感染しやすいって。外には行かないが、ペットホテル預ける時不安だ」
など飼い主から不安の声がきこえる。
ネコからヒトへの感染は確認されていない。一方で、動物が新型コロナウイルスに感染した例は過去にも認められている。
20年に3月16日、香港で、新型コロナウイルスの感染が確認されたイヌが死んだ事例がある。各メディアの報道によると、イヌは17歳のポメラニアン。飼い主の60代女性はもともと2月に新型コロナウイルスに感染していた。その後、飼い犬のポメラニアンからウイルスの弱陽性反応が検出され、香港政府が調べた結果低レベルの感染が確認された。
3月27日にはベルギー当局がネコへの感染確認を発表。なお東大医科研の発表資料にも、米ニューヨーク市の動物園でトラやライオンなどネコ科動物の感染報告があると記述されている。
ネコは感染しやすく、人間からうつる可能性
公益社団法人日本獣医師会は、2020年5月1日に動物の新型コロナウイルス感染について対応方法を発表した。ペットから人間への感染は報告されていないことを前提に、中国やドイツで実施された感染実験では、感染の受けやすさを意味する「感受性」について、ブタや鶏は非感受性であり、イヌについてもほとんど感受性がないとしている、と説明。しかし、ネコとフェレットは感受性が高く、ネコからネコへの感染が見られるとの報告があることなどを受け、以下のような対応を推奨するとしている。
まず、感染者と濃厚接触のあったペットが感染する可能性は否定できないことから、飼い主がしっかり感染予防に努めることが重要だとしている。また、人間からネコ、ネコからネコへの感染の可能性が考えられることから、ネコは外に放さず室内で飼育することが望ましいとのこと。
もし新型コロナウイルスに感染した飼い主と接触のあった動物に、何かしらの症状が見られた場合は、かかりつけの獣医師と電話で相談のうえ、獣医師の指示に従い動物病院で診察を受けるよう促している。