新型コロナでハンドドライヤー停止 感染拡大の抑止効果は?専門家に聞いた

   新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的に、商業施設や駅のトイレに設置されたハンドドライヤー(乾燥機)が使用停止になっているという報告がツイッター上で相次いでいる。

   こうした措置には意味があるのか。感染症の専門家に取材した。

ハンドドライヤーの利用停止、どれだけ意味あるの?
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停止理由に「飛沫感染の恐れ」挙げるケースも

「新型コロナウイルス対策のため、ハンドドライヤーは停止しております」

   J-CASTトレンド編集部が2020年3月10日、東京都内にある商業施設のトイレを訪れると、このような貼り紙が貼ってあった。停止していたハンドドライヤーは、手を下に差し入れて使うタイプ。手洗い場にペーパータオルは置いていないため、洗った手の水分を取るには手持ちのハンカチなどで拭くしかない。

   ツイッター上では、ショッピングモールや映画館、駅、高速道路のサービスエリアで「ハンドドライヤーが使えなくなっている」との投稿が見られる。いずれも「ウイルスの感染拡大防止」を目的としたものだ。中には「飛沫感染のおそれ」を理由に挙げているケースもあるようだ。

   ツイッター上では「これくらいして当たり前」「(風で)菌を撒き散らすもんだと前から思ってた」と評価する声が多いが、「手を洗った後に乾かすから問題ないと思うんだが...」との疑問もある。

   感染制御学を専門とする東邦大学看護学部の小林寅テツ(いんてつ、テツは「吉吉」))教授はJ-CASTトレンドの取材に、「汚染されたものを撒き散らすリスクを避けるという意味で、(ハンドドライヤーを)使用停止とするのはよろしいのではないか」と見解を語る。

新型コロナの感染リスク「なくはない」ただし...

   小林教授は「新型コロナウイルスに限らず」と前置きした上で、水滴のたまったハンドドライヤー内に何らかの病原体が残っていた場合、ドライヤーの風が水分を含む「エアロゾル」を発生させると説明。その至近にいる人間が、汚染されたエアロゾルを吸い込む可能性があるという。

   厚生労働省の冊子「新型コロナウイルスを防ぐには」によると、感染には、ウイルスが付いた手で口や鼻を触ることで起こる「接触感染」、感染者のせきやくしゃみから出たウイルスを吸い込む「飛沫感染」の2つ。なお中国衛生当局は20年2月19日の報告で、閉鎖された環境で長時間、高濃度のエアロゾル(サイズが小さく、空中に浮遊する粒子)を浴びた場合に「エアロゾル感染」が起こるリスクを指摘しているが、厚労省はその可能性について言及していない。一方で飛沫感染、接触感染も厚労省が「現時点で」考えられるものとの位置づけで、新型コロナウイルスの感染実態についてはまだ分かっていないことが多いようだ。

   小林教授は、ハンドドライヤーから発生するエアロゾルによるウイルス感染の可能性について、

「(エアロゾルを)吸い込んだら、それはリスク。感染するリスクは『なくはない』。ただし、それはドライヤー内が汚染され、なんらかの病原体がいるということが前提です」

と語る。

   その上で「ハンドドライヤーは手を乾かす効果は得られるが、副次的にそういうもの(ウイルスなど)が飛び散るリスクもある」として、仮にハンドドライヤーが使える場合でも、ハンカチやハンドタオルで手を拭くことが望ましいとした。

   一方、「飛沫感染の恐れ」を使用停止の理由に挙げている事例については「飛沫は口(や鼻)から出てくるもので、(感染者の)外部からは生じない」と、停止理由としては「正しくない」と指摘した。

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