新型肺炎で中国にデマ猛拡散 「日本の医療チーム1000人が武漢に」はウソ
中国は新型コロナウイルスだけではなく、肺炎とともに拡散する真偽不明の情報との戦いにも迫られている。共産党系メディアの環球時報は2020年1月29日、「新型肺炎に関する15のデマ」という記事を掲載し、注意を呼び掛けた。
15のデマのうち最初に紹介されたのは「日本が1000人の医療チームを武漢に派遣する」というものだった。
「ニンニク水が新型肺炎の治療に効く」もフェイク
SNSのウェイボ(Weibo、微博)では、1月27日ごろから日本のテレビ番組をキャプチャした画像とともに、「日本が1000人の医療チームを武漢に派遣する」という情報、さらに日本への感謝のコメントが猛拡散した。
画像を見ると、情報番組「情報ライブミヤネ屋」(読売テレビ)の一場面のようだ。実際に1月27日放送の同番組を確認すると、字幕で「速報」として、「"新型肺炎"中国政府が会見 医療関係者約1000人『武漢に派遣』」と出た。続いて会見の映像が流れた際、日本語訳の音声とテロップで「7つの省などから医療関係者959人を集めて武漢に派遣して治療をサポートする」と説明されていた。「日本から」という言葉は、一切出てこなかった。
環球時報の記事は、「本当は、『中国7省が1000人の医療スタッフを武漢に派遣』という意味だったが、日本語は主語を省略する習慣があるので、誤解を生んだ」と解説している。
記事ではこのほか、「抗ウイルスマスクは風に当てるかアルコール消毒をすれば繰り返し使える」「ニンニク水が新型肺炎の治療に効く」といった言説の一つ一つを、理由を説明しながら「デマ」と断じている。
WeChat「デマ」にアカウント凍結、警察は見せしめに写真公開
SNSで拡散するデマやフェイクニュースに対しては、運営企業も神経をとがらせる。10億人以上のユーザーを持つメッセージアプリWeChat(微信)では、専門家が投稿を監視し、デマや悪質投稿を削除している。悪質な情報を発信するアカウントには、永久ロックという強硬手段も取っている。
警察も、デマの拡散を犯罪と同様の行為とみなしている。陝西省咸陽市にある乾県の警察は1月28日、「春節で武漢から乾県に帰省した5人が新型肺炎を発症した」とのデマを発信した男を特定、拘束し、見せしめのためか写真も投稿した。
中国メディアや政府機関は、デマを否定、削除しながら「今分かっている事実」や、「(感染が疑われる人の)14日の隔離期間の正しい過ごし方」などを日々発信しており、社会秩序の悪化を懸念していることがうかがえる。
(ライター・浦上早苗)