芥川賞作品より「売れる」と評判 カリスマ書店員が選ぶ「新井賞」受賞作は
「新井賞」という文学賞をご存知だろうか。「カリスマ書店員」新井見枝香さんが2014年に始めたもので、新井さんが個人的に推薦したいとする本を選ぶ異色の賞だ。
芥川賞・直木賞と同じ日に受賞作が発表され、11回目となる今回は2020年1月15日、小説家・小川糸さんの「ライオンのおやつ」(ポプラ社)が選出された。
担当編集者「とても光栄、嬉しく思いました」
新井さんは文庫本の解説や帯コメントなどの依頼が多く寄せられ、テレビへの出演経験もあり、出版業界では注目の存在だ。発表資料によると、近年では新井賞の受賞作が芥川・直木賞の受賞作よりも売れる店舗が出ているほどだという。過去には辻村深月さんの「朝が来る」(文藝春秋)や、三浦しをんさんの「ののはな通信」(KADOKAWA)などが受賞している。
今回受賞した「ライオンのおやつ」は、瀬戸内の島にあるホスピスを舞台に、余命を宣告された33歳の女性の主人公が、周りの人々とともに残された日々を生きていく物語。2019年10月に発売された。ポプラ社の発表によると、主人公たちが懸命に生きていく姿や真摯に死と向き合う姿は、読者から熱い支持を集めている。
新井さんは同作品を選んだ理由を、本の動画投稿サイト「本TUBE」内の動画で説明した。「本っていうのは読む人の気持ちの状態とか、過去に何があったかっていうので印象が大きく違うと思います」と前置きした上で、「この(本の)中に出てくる、なんてことない、おでんのシーンがあるんですが、そこが私の強い悲しい記憶にリンクしたので、これを選びました」と明かしている。悲しくて悔しい記憶を思い出して泣いたそうだが、同作品を読んでその気持ちがようやく昇華できた気がした、との話だ。
J-CASTトレンドは、「ライオンのおやつ」の担当編集者に取材した。「新井賞」は以前から知っていたと話し、受賞について、
「とても光栄です。新井さんの記憶と結びつく形で心が動いたと言っていただけて、この作品がそういう届き方をしたことを担当編集者としてとても嬉しく思いました」
と喜んだ。