埼京線「品川行き」えっ?あり得ない 通らないはずの駅に停車した電車
「なんで品川に埼京線おるんや」―――。
JR品川駅(東京都)のホームで2020年1月8日朝、緑色の帯の「JR埼京線」の電車を目にしたツイッターユーザーの反応だ。電車の行き先には「品川」と書かれているが、埼京線は本来品川駅を通らない路線。謎を追った。
ダイヤ乱れの「一時避難」で発生
埼京線は大宮駅(さいたま市)から池袋駅、新宿駅など都心のターミナルを通り大崎駅(東京都)に至る。大崎駅からは東京の臨海部を走るりんかい線や神奈川県中部に向かう相鉄線に乗り入れているが、いずれの路線も品川駅を通らず、「埼京線品川行き」という行き先も普段のダイヤでは存在しない。
1月8日朝、埼京線内で事故が発生し、埼京線は一時運転見合わせた。影響は直通先の相鉄線にもおよび、本来なら大崎駅方面に戻るはずの埼京線の車両「E233系」も相鉄線内で足止めを食らっていた。
J-CASTトレンドの取材に応じたJR東日本東京支社の広報担当者によれば、
「相鉄線内の輸送力を確保するため、相鉄線から埼京線に直通する列車のうち1本を品川駅での折り返し運転(品川行きの運転)に変更した」
実は相鉄線から埼京線への直通列車は、途中大崎駅の手前までJR横須賀線と同じ区間を走っている。今回のように埼京線が止まった際、直通運転を続ければ、さらに遅れが拡大する恐れがある。そこで、埼京線のダイヤが平常に戻るまでの「一時避難先」として、横須賀線の品川駅に向かう形を取ったのだ。
埼京線と相鉄線は19年11月30日に相互直通運転をはじめたばかりだが、同担当者によれば今回のようなケースは初だという。今後についても「状況により品川駅での折り返し運転を行う可能性はある」とした。
池袋駅だけど...いつもと違うホームに到着
埼京線車両の「品川行き」のように、通常のダイヤならあり得ない行き先が突如生まれるケースの類似例がある。
2013年に西武池袋線(以下、西武線)・東武東上線(以下、東武線)との相互直通運転を開始した東急東横線(以下、東急線)がその典型例だ。東急線は普段、東京メトロ副都心線を通る形で西武線や東武線に直通している。しかし、いずれかの路線でダイヤが乱れた際には、西武線内にいる東急の車両が東急線への直通運転を取りやめ、西武線の「池袋行き」として運行するようなケースが発生するのだ。池袋駅では普段、東急線の車両は地下にある副都心線のホームから発着しているが、この場合は地上にある西武線のホームに到着するという点で「レアケース」となる。
その東急線は2022年度を目途に、新たに相鉄線との直通運転を開始する予定だ。埼京線とつながる相鉄線が東横線とつながり、東横線の先には東武線や西武線がつながる、まさに迷路のような路線網が誕生しようとしている。路線同士の乗り入れが増えるほど、ダイヤが乱れた際の影響は多路線に及ぶことになる。今後は普段のダイヤならあり得ない行き先を目にする機会が増えていくかもしれない。