「ブロッコリー押し」で地元・石川県応援【ツイッターは仕事!企業公式「中の人」集合(9)】
農業法人・安井ファーム(石川県白山市)は、石川県内のブロッコリー作付面積の約3割を1社単独で占める。2019年10月に農林水産祭の園芸部門で「内閣総理大臣賞」を受賞、質の高い農産物の生産・販売を続けている。
その公式ツイッターアカウントの投稿は緑一色。広大な畑で生育されているブロッコリーの様子や収穫後の山盛りプロッコリー、はたまたおいしく調理されたブロッコリーなど、これでもかというほどブロッコリーの写真ばかりがツイートされている。
タピオカの日に「ブロッコリーの画像をお届け」
【有限会社安井ファーム【公式】】主力商品のブロッコリーを中心に、農産物の生育・収穫状況をコミカルに伝える。現担当者が19年1月にアカウントを開設し、現在まで運用中。
ツイッターを担当するのは広報課責任者の社員。畑から収穫されたブロッコリーを選別する業務の傍ら運用している。ユニークなのは毎朝行う挨拶ツイートだ。時事ネタやトレンドワードなどと自社サービス・商品を、PR色が強くなりすぎないよう自然に紐付けて投稿する企業公式アカウントが多いが、安井ファームは、
「9/1は #キウイの日 ということで、ブロッコリーの画像をお届けします」
「10月31日は #ハロウィン ということで、ブロッコリーの画像をお届けします」
「11月9日は #タピオカの日 ということで、ブロッコリーの画像をお届けします」
このように、関連付けるのが難しそうなイベントや記念日でも「~ということで」と、直球でブロッコリーに絡めてしまう。だがこの"強引さ"がファンに好意的に受け止められ、昨今では日々100以上の「いいね」を獲得している。
「ふと『面白いかも』と思いついて19年2月3日に『節分ということで【ブロッコリー】の写真をお届けいたします』とつぶやいたら、それまでより反響が多く寄せられました。そこで試験的に(1)記念日に忠実な挨拶、(2)どんな日だろうと、あえてブロッコリーの写真を紹介する挨拶の2つを使い分け、フォロワーの反応を数日探ってみたところ、後者が人気を集める結果に(笑)。今では鉄板ネタです」(安井ファーム担当者)
「世のためになることを」強い思いの裏に
投稿を見ていると、ブロッコリーにまつわるさまざまな知識を得られるのも魅力のひとつ。長期保存する場合の方法を説明したり、おいしいブロッコリーレシピを作って紹介したり、GIF画像を使ったルーレット式のブロッコリークイズを出題したりと最早、企業公式というよりは「ブロッコリーアカウント」と称した方が近いように思えるが......。
「ツイッターは売り込みをするビジネスツールだとは考えていません。自社の利益よりむしろ、地域貢献やブロッコリーの需要増進など『公共の利益』に繋がるよう心掛けています。例えば直近では『いしかわ観光特使』に就任しました。地元に根付く企業として、主力商品・ブロッコリーの情報発信を通じ、観光誘致や地方創生に繋げたいと思っています」
実はこうした考えに至った理由は、若くして患った二度の「がん」にある。一度目は20代半ば、実習生としての勤務を終え、地方のレタス農家に住み込みで働き始めた矢先のこと。地元に帰省、手術を経て現在の会社に入社するも、約1年後に別のがんが見つかった。初めてがんを知ったとき、「心底打ちのめされた」と語る。
「『俺の人生はいったい何だったんだ、世のためになることをしたい』と強烈に思いました。無事、手術は成功しましたが長時間の移動やトラクター運転がきついので、今でも体調と相談しながら勤務中です。ただハンドメイドが趣味で、画像加工も得意なので、それらが生かせる『ツイッター担当』というポジションをもらったことに感謝しています。楽しく運用して、会社にも恩返しできればと思っています」