肌上に極薄膜「ファインファイバー」作る新技術 花王が開発秘話の動画公開
花王(東京都中央区)は、自社の技術開発を研究者の視点から紹介するウェブサイト「花王の顔」で、動画「花王の顔ファインファイバー編」を2019年11月27日に公開した。
1分半の本動画では、「Fine Fiber Technology(ファインファイバーテクノロジー)」という花王の新技術の開発に携わった3人の研究者が、開発秘話や今後の展望について語っている。
1ミリの1000分の1以下「細い繊維の膜」
「ファインファイバーテクノロジー」とは、機器を用いて極細の繊維を直接肌に噴きかけ、肌上に積層型の極薄膜をつくる技術で、膜自体を「ファインファイバー」と呼ぶ。花王では、紙おむつやウェットティッシュなどに使われている素材である不織布を長年研究しているが、「ファインファイバー」は不織布の技術を発展させたものだ。1マイクロメートル(0.001ミリメートル)以下の細い繊維が折り重なってできた膜は、軽くて柔らかい。肌の表面をなめらかに整える性質があり、自然になじむため肌との境目も見えない。
「ファインファイバー」を生み出したのは、花王の研究者の東城武彦さんと甘利奈緒美さんだ。動画内で東城さんは「不織布の研究に携わっていた時に、これは肌に使えるだろうと思っていた」と話している。開発当初は極細繊維をシートにしてみたが、薄くて柔らかいため扱うことが難しく、肌に直接噴きかける発想に変えたとのことだ。
花王の商品開発研究所でスキンケア分野を担当する内山雅晋さんは、極細繊維のもつ「毛管力」の液体を均一に保持する性質に注目した。毛管力とは、物体内の狭い隙間が液体を吸い込む力のことで、毛筆が墨汁を吸い上げる、あるいはティッシュの端を水につけると次第に水を吸収して全面的に濡れてしまう現象がこれにあたる。内山さんは、化粧品で使われているような均一に広がりにくいペースト状のものが、「ファインファイバー」を使うと均一に広がっていくことに衝撃を受けた。今後、この極薄膜が美容などの分野で活用できるのでは、と動画内で期待を寄せている。
「花王の顔」では、本動画とあわせて3人の研究者のインタビュー記事も公開している。