台風や豪雨でも浸水・逆流・水没しない「耐水害住宅」 大型降雨施設で公開実験
近年、豪雨による水害被害が毎年のように発生している。最近でも、台風19号が東日本に大きな損害を与えたばかりだ。国土交通省の統計によると、2006年~17年の水害被害の年間平均は、床下浸水が約2万2000棟で床上浸水が約7300棟。その被害額は地震災害によるものより大きいといわれている。
国立研究開発法人防災科学技術研究所と一条工務店(東京都江東区)は、官民共同による水害被害の軽減プロジェクトとして、浸水を防止する様々な技術を組み合わせた「耐水害住宅」の公開実験を2019年10月2日に実施した。
1時間300ミリの豪雨実験でも水没なし
実験は大型降雨実験施設で行われた。
30(幅)×40(長さ)×3.5(深さ)メートルの大型水槽の中に、一般的な住宅と耐水害住宅の2棟を建設し、1時間に300ミリメートルほどの雨が降った場合の水害を再現。洪水氾濫を想定し1200トンの水を注入した上で、雨を120トン降らせた。水槽の中には水中ポンプ6台を設置し、氾濫による水流も生み出した。
実験の結果、一般住宅では、床下の基礎換気口や玄関などの開口部から浸水。トイレや浴室からは排水管の水が逆流し、屋内の水位は腰の高さまで達した。
一方、耐水害住宅では床下・床上浸水、排水管の逆流もなかった。設備機器の水没もなく、電気温水器、床暖房、エアコン、インターホンのいずれも機能していた。
耐水害住宅に施された数々の工夫
耐水害住宅は、「浸水を防ぐ」「逆流を防ぐ」「水没を防ぐ」という3つのポイントに着目して開発されている。
床下浸水を防ぐため、基礎換気口は水の流入を止める仕組みになっている。
床上浸水は、窓と玄関ドアに自動車ドアの技術を応用したパッキンを取り付け、外部浸水時に水圧によって窓や扉が押される力を利用して止水性能を発揮するようにして対策。水の侵入口となる鍵穴を通常よりも高い位置に設置したり、窓ガラスに強化ガラスと合わせガラスの両方を採用したりする工夫もされている。
宅内の配管系統に逆流防止弁を設置することで下水の逆流を防ぎ、貯湯タンクのポンプや基板などの電子部品をタンク上部に配置、エアコン等の室外機は基礎に固定した専用架台に設置することで、水没を防止する。
実験で使われた技術は、2019年内の商品化を目指している。価格は一般住宅より数十万円高くなる予定だ。