真島ヒロさんも「一番似てる」と太鼓判 「FAIRY TAIL」続編描く上田敦夫さんの絵柄に驚き

   漫画家・真島ヒロさんの人気少年漫画で、「週刊少年マガジン」で2006年から17年まで連載された「FAIRY TAIL(フェアリーテイル、以下「FT」)」。炎を自在に操る「滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)」の主人公・ナツら、魔導士たちが織り成す魔法バトルファンタジーだ。

   その続編「FAIRY TAIL 100 YEARS QUEST」が、少年マガジン公式無料漫画アプリ「マガポケ」で18年7月から連載している。ネーム原作は真島さんだが、作画は漫画家の上田敦夫さんが担当。開始当初「違う作画担当に変わったはずなのに、絵柄が真島さんそっくり」だと、ツイッターで好評を博した。あえて似せているのか、もともと絵柄が似ているのか、上田さん本人に理由を直撃した。

「FAIRY TAIL 100 YEARS QUEST」イラスト
「FAIRY TAIL 100 YEARS QUEST」作画担当の上田敦夫さん
上田さんお気に入りキャラ、ヒロインのルーシィ
上田さんが描いたキャラクターイラスト
真島さんが描いたキャラクターイラスト
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「いかに真島先生と間違われるか」という挑戦

   取材に先立ち、記者はFTのコミックス全63巻を読破した勢いそのまま、発売中の「FAIRY TAIL 100 YEARS QUEST」1~3巻を楽しんだ。作画が上田さんによるものだと知っていても、キャラクターのタッチや表情、背景などがFT本編と違いがわからず、続編も真島さんが原作から作画まで手掛けているのではないかと感じる。そう伝えると、上田さんは「その言葉が一番嬉しい」とほほ笑んだ。

「作画を通じて、常に『いかに真島先生と間違われるか』という挑戦をしています。読者がFT本編から続編の世界に入ったとき、作画をバトンタッチしていることに気づかれないよう、意図的に真島先生の絵柄に似せて描いているので」

   徹底して絵柄を似せようとする理由――そうでないと「真島先生の一ファンとして、誰より自分ががっかりするから」だ。

「FTはもちろんですが、中学生の頃に『RAVE(レイヴ)』(真島さんの漫画)も読んでいて、真島先生の作品に長く親しんでいる人間の1人です。だからこそ、他ならぬ自分の手で真島先生の世界観を壊すようなことをしたくありませんでした。自分と同じ『真島先生ファン』に喜んでもらうために、自分の作風や絵柄で描くことより優先すべき点があると考えながら、いつも描いています」

   ただ現時点で自身の作画の出来栄えに「納得はしていない」。特にタッチやキャラクターの表情は「まだまだ」と思っているが、どうしても自分の描き癖は出てしまうので、その点は割り切っているそうだ。特に描くのが苦手なキャラはいるのだろうか。

「ヒロインのルーシィですね。真島先生の『美少女像』が投影されているのではないかと思っており、表現するのが難しいです。また、ルーシィは作中でセクシーなポーズや格好で敵に色仕掛けをしようと頑張るのに、なかなか上手くいかないお茶目なキャラで、僕自身お気に入りです。思い入れがある分、描いた時に自ずと他のキャラよりも厳しい目でチェックしてしまうから難しいと感じるのかもしれません(笑)」

「ここまで絵柄が似てるなら、外伝じゃなくて続編描いちゃう?」

   真島さんとタッグを組み、「FAIRY TAIL 100 YEARS QUEST」の作画をすることになった経緯について、上田さんは驚きのエピソードを語ってくれた。初めは続編でなく、FTの「外伝を描かないか」と提案を受けていたというのだ。

「話があったのは17年末頃です。まずはFTのキャラクターイラストを描いて見てもらおうと、原作に近付けて描きました。すると、チェックしてくれた真島先生が『これまで色々な漫画家さんに描いてもらったなかで、一番僕の絵に似てる!』と太鼓判を押してくれたのです。そうしたらいつの間にか『ここまで絵柄が似てるなら、外伝じゃなくて続編描いちゃう?』という話になり...(笑)」

   ファンタジー作品の作画に携わるのが初めてだった上田さん。人気漫画の続編を担うのはさすがに荷が重く、頭を抱えた。そこで「ファンタジー作品に明るい原作者(漫画のストーリー担当)をつけてほしい」と要望したところ、いつの間にか真島さんがネーム原作担当として参画することが決まっていたのだ。「結局手を煩わせてしまった」と、それはそれで頭を抱えたそう。

   実際の作品づくりは、真島さんが漫画のコマ割り、コマごとの構図、セリフ、キャラクターの配置などを大まかに表した設計図である「ネーム」を上田さんに送り、そこに描かれている情報に基づいて上田さんやアシスタントがキャラクターや背景を描き起こす。ストーリー展開は基本的に真島さんが指揮を執っているが、「次はどうしたい?」、「どんなドラゴンを出したい?」と意見を求めてくれることも多いそう。

「毎回、教科書のようなネームが送られてきます。まさにわかりやすさの権化で、しかも面白い。ネームってこう書くんだ、と毎回学ばせてもらっています。プレッシャーもありますが、これからも全力で作品づくりに取り組んでいきたい。作家生命を懸けてでも物語を完結させる覚悟です」

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