「早パタ、遅パタ」ってどういう意味 駅の「不思議広告」仕掛け人に聞く
「早パタ、遅パタ、バタバタな皆さまへ」
美容フェイスマスク「LuLuLun(ルルルン)」を販売するグライド・エンタープライズ(本社:東京)が、2019年9月11日(一部9月9日)から、首都圏を走る京急本線の駅で掲出する広告の冒頭文だ。これに続く文章も含めて、一見すると暗号のような語句が並んでいるが、実は一部の職業に就く人ならば「解読」できるメッセージだという。
「帰りはDHで、明日はサブロー」野球の話じゃないの?
広告のメッセージは、以下のような内容だ。
「CATが出現して、14フォックスのPAXからCallボタンが止まらない」
「帰りはDHで、明日はサブローとして搭乗」
「CAT」が猫、「フォックス」がキツネだとすると、動物に関連する話だろうか。しかし、「DH」は野球の指名打者が連想できるし、「サブロー」は元プロ野球選手の名前と一致する。とはいえ、文としての意味は分からない。
その後も、「T/OからL/Dまで」「21チャーリーのPAXにOJ出している」など、難解な言葉が次々と出てくる。しかし、文章の最後に目をやると、
「乾燥した機内で、お肌はずっと働いています。キャビンアテンダントの皆さま、たまには、ゆっくりLuLuLunしませんか?」
ここでようやく、キャビンアテンダント(CA)という具体的なワードが出てきた。
散りばめられた言葉はCAが業務中に使う「専門用語」で、広告は「CAにしか分からない」ルルルンからの応援メッセージだったのだ。
「狭い所への訴求」に面白み
J-CASTトレンドは、広告を仕掛けたグライド・エンタープライズと、大手広告代理店・電通を取材した。
広告制作を手がけた電通の三戸健太郎さんは、
「ルルルンは『肌への潤い』を提案する商品。誰に使ってもらうのがよいか考えた時、乾燥した機内で仕事をされているCAの方が思い浮かんだ」
と、ターゲットを絞った経緯を振り返る。
そうした中で「CA業界には専門用語がたくさんある」と、元CAから聞いたことが今回のユニークな文章になった決め手となった。実際に「CA用語」についてアドバイスを受けながら制作を進めたと明かした。
文中の「CA用語」を三戸さんに一部を解説してもらった。
早パタ、遅パタの「パタ」は「フライトパターン」のことで、DHはデッドヘッド(業務移動のため飛行機に乗車すること)、サブローは「Subject to Load」、つまりプライベートな搭乗を意味しているという。
三戸さんから広告案を提示されたグライド・エンタープライズの金子はるかさんは、
「これまでのルルルンの広告は『乾燥の季節』とか『日焼けした肌に~』といった、大きい括りでの訴求ばかりだった。今回の企画案を見て、最初は何を言っているかわからなかった。それでも、あえて狭い所に訴求する点に面白みを感じた」
と語った。
広告掲出後、実際のCAに感想を聞いた三戸さんは「『なにこれウケる』『他の人は絶対に分からないでしょ』というリアクションをしていた。専門用語を使うことで、『身内感』を覚えてもらえたのでは」と嬉しそうに語る。反響は上々のようだ。
広告は品川駅や穴守稲荷駅など羽田空港と近く、CAの利用が多い京急電鉄の5駅で9月17日(一部9月15日)まで掲出される。