東日本大震災から8年――「不都合な真実」を明らかに
東日本大震災の発生から8年。復興はどこまで進んでいるのか。避難生活をしている人たちは今なお5万人を超え、東京電力福島第一原発事故後の課題も山積している。一方で、風化を危惧する声もある。今回は東日本大震災をテーマに、女性新聞記者の現地レポート、外国人記者による証言集、主婦漫画家の体験記など3点を紹介したい。
J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ」でも特集記事を公開中。
福島原発近隣地域でなぜ人は消えていくのか
『地図から消される街 3.11後の「言ってはいけない真実」』(著:青木美希 講談社 994円)は、東日本大震災直後から現地へ足を運び、取材を続けている朝日新聞の女性記者の報告だ。
復興が叫ばれながら福島原発近隣地域でなぜ人は消えていくのか。現実を無視した「帰還」事業、弱者への支援の打ち切りなど問題点を鋭く追及する。「『すまん』――原発事故のため見捨てた命」「声を上げられない東電現地採用者」「捨てられた避難者たち」など7章。「言ってはいけない真実」に迫る。
著者は北海タイムス、北海道新聞社を経て2010年に朝日新聞に入社し、新聞協会賞を受賞した原発事故検証企画「プロメテウスの罠」や調査報道「手抜き除染」に参加。本書は「貧困ジャーナリズム大賞2018」を受賞した。
宮沢賢治の言葉に込めた思いは
『雨ニモマケズ 外国人が伝えた東日本大震災』(著者:ル―シ―・バーミング、デイヴィッド・マクニール えにし書房 2160円)は、日本在住の2人の外国人記者によるルポルタージュだ。
大震災を生き延びた6人へのインタビューを中心に客観的な視点から震災の実像を示す。証言者はタイ系アメリカ人英語教師、保育園の調理師、漁師、高校生、南相馬市長、原発作業員の6人で、綿密な取材をもとに深い悲しみを丁寧にすくいあげている。同時にジャーナリストとして、日本のマスコミのあり方を批判している。
目次は「メルトダウン」「天皇の言葉」「世界に伝える」「東北魂」など10章。翻訳はPARC自主読書会翻訳グループ。タイトルの宮沢賢治の言葉「雨ニモマケズ」にどんな思いを込めたのか。
オタオタした主婦の270日の震災体験
「東日本大震災発生。その時から私たち家族の生活が変わりました。コミカルにさえ見える私の奮闘ぶりをどうかお読みください」(著者の言葉から)。『生き残ってました。 主婦まんが家のオタオタ震災体験記』(著者:ひが 栞 祥伝社 576円)は、主婦漫画家が書いた270日の被災体験だ。
2011年3月11日午後2時46分。「それは、今まで経験したことがない強烈な揺れでした。飛行機の滑走音よりも大きく、大地が割れるような音が響く。背筋が凍る瞬間でした」。地震発生から避難所、被災地など5章で40の場面を漫画で描く。
予兆、家族の安否、避難所に到着、トイレにびっくり、へドロ、ガレキ、お金のこと、髪を洗う、被災と学校、ボランティア、ライフラインの復旧、コンビニの再開、失業者と震災バブル、被災地に来た芸能人、援助物資など。