「米アカデミー賞」91回の歴史を彩る人物とドラマ
2019年2月24日(米国時間)、第91回アカデミー賞が発表された。日本でもまだまだロングランが続いている話題の映画「ボヘミアン・ラプソディ」が主演男優賞をはじめ、最多の4冠を達成した。作品賞は人種差別時代の友情を描いた「グリーンブック」が受賞。日本では3月1日公開というタイミングもあり、これからの話題作になることは間違いない。そこで今回は全91回のアカデミー賞について、歴史や受賞作品などにまつわる3冊をご紹介する。
J-CASTニュースの書籍サイト「BOOKウォッチ(http://books.j-cast.com/)」でも特集記事を公開中。
最新映画学の成果を紹介する決定版
「つくる人・上映する人・観る人」という視点から、ハリウッド誕生、その盛衰、そしてデジタル化と世界規模で進む大域化の渦中にある現在までを描く『新版ハリウッド100年史講義』(著者:北野圭介 平凡社 972円)。著者は立命館大学映像学部教授(映像理論)、2017年4月より映像学部学部長をつとめる北野圭介氏。
「ハリウッド前史/映画を支えた都市の庶民、見世物としての映画・見世物を映す映画ほか」「夢の工場―物語装置としての映画/ハリウッド誕生、夢見るハリウッド、古典的ハリウッドの成熟と輝き、黄昏に輝くハリウッド」「ハリウッド再生―夢の王国へ/70年代以降―生産工場からエンターテインメント・ビジネスへ、世界が舞台、今日のハリウッド―80年代から90年代まで」などで、ハリウッド映画は今後どこに向かうのか。まるごと一冊、北野氏の「ハリウッドの夢」についての講義が聞けるような内容だ。
ブックガイドを兼ねた参考文献リスト付き。
特殊メイクで世界の頂点に立った辻一弘氏、初の著書
第90回アカデミー賞『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』という作品で日本人初のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した辻一弘氏初の著書『顔に魅せられた人生』(著者:辻一弘 宝島社 1404円)。
映画「PLANET OF THE APES/猿の惑星」(2001年)、「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(2008年)などの作品で、今や映画界になくてはならない存在となった辻氏。幼少期に植え付けられた劣等感を乗り越えるべく自身に言い聞かせてきた信条をはじめ、特殊メイクアップアーティストとしてハリウッドで重宝されるなか"食っていけないかもしれない"現代アーティストへ転身を決意した裏にある人生観を語り尽くす。
「もの作りに明け暮れた幼少期」「下積み時代"趣味"が"仕事"に変わった瞬間」「夢のハリウッドへ」「撮影現場という苦悩」「ハリウッドを離れる決断」「現代アートの世界へ」「顔に魅せられた作品づくり」「『ウィンストン・チャーチルを救った男』」の全8章。
特殊メイクという日本に先人がいない世界で、言葉も技術もすべて独学で身につけた辻氏。夢に向かって一歩前に踏み出したい人に勇気と希望を与えてくれる。
国際俳優「雪洲」を調べ尽くした
「スケールが大きく、一流を好み、豪華で、賭け事が好きで女好き。長命で、生涯現役だった国際スター雪洲は胸も肩も張って生きた。こんなに力強くて魅力的な人はいない。と思ったら、じつはとても無口で、電話口ではいつも、あー、うーとしか言わず、家族にくすくす笑われていた(本書より)」。
1957年に公開された英・米合作映画「戦場にかける橋」で、日本人男性初のアカデミー賞にノミネートされた元祖国際俳優であり、半世紀以上世界で活躍し続けた大スター。なぜ彼は故国・日本で"国賊"と呼ばれ続けたのか...。『セッシュウ! 世界を魅了した日本人スター・早川雪洲』(著者:中川織江 講談社 2700円)では、「チート」から「戦場にかける橋」までの全出演作品を網羅し、巨星のたどった軌跡を再現する。
「雪洲になるまで」「夢や夢・あこがれのアメリカ」「アメリカの舞台」「堂々帰国」「"ハヤカワ劇場"閉幕す」など全10章。