ラグビー選手「五郎丸」で素朴な疑問「〇郎丸までいるの?」 ニッポンの名字(最終回)

   「名字研究家」として知られる森岡浩氏に語ってもらった「ニッポンの名字」シリーズの最終回は「有名人の珍しい名字」、「ニッポンに多い名字ランキング」について聞いてみた。

森岡浩氏著「日本人のおなまえっ! 日本が分かる名字の謎」(NHK番組制作班・編、集英社インターナショナル発刊)
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唯一、確認できていない「〇郎丸」とは?

   ラグビーの五郎丸歩選手といえば、2015年ワールドカップ(W杯)で大活躍し、キックを蹴る前の「五郎丸ポーズ」がブームとなった。高い人気を誇る前日本代表FB(フルバック)で、日本中にその名をとどろかせた有名人である。

   「五郎丸」がいる...ということは、当然ながら「一郎丸」、「二郎丸(次郎丸)」、「三郎丸」...がいても、おかしくないのでは? という疑問が沸く。森岡氏は、

「いい質問ですね。実は、私が調べたところでは『一郎丸』、『二郎丸(次郎丸)』、『三郎丸』...と続いて『五郎丸』、さらには『九郎丸』までは確認できたのですが、なぜか『八郎丸』だけは確認できていません」

   森岡氏によると、「五郎丸というファーストネームのような名字は意外と多い」のだそうだ。五郎丸姓は福岡県と山口県に集中しており、五郎丸選手は福岡県の出身。実は、この地方には「五郎丸」に限らず、「丸」で終わる名字が多いという。かつて、阪神タイガースに「源五郎丸洋」という投手がいたことを覚えている野球ファンもいるだろう。彼も佐賀県の出身だった。

   「丸」が付く名字について、同氏は、

「『丸』という字は、『新しく開墾した新田を指す』と言われています。つまり『五郎丸』姓というのは『五郎さんの開発した田んぼ』という意味で、その田んぼの所有者や耕作者が名乗った名字だと考えられます」

と話す。

   しかし、何で「八」がいなくて「九」がいるの? という、更なる疑問が。

「『なぜ?』と聞かれると、明確な答えはありません。ただ、確認はできていません」

「政治家やスポーツ選手、芸術家やタレント...」には、長男長女が多い

   森岡氏の取材の中で、かつて聞いたある話を思い出した。「政治家や起業家、スポーツ選手、芸術家やタレント」には長男長女が多い、という内容だ。「そんなことはない! サッカーのカズ(三浦知良選手)や元横綱・貴乃花だって、次男じゃないか!!」とおっしゃる方もおられよう。

   しかし、考えていただきたい。まず「長男長女」が存在しない限り「次男次女」は存在しない。つまり、この世の中では「絶対数」として「長男長女」が、「次男次女」、「三男三女」より多いことは明白である。「長男長女」の絶対数が最大である以上、成功者も犯罪者も多くなってしまう...というのが世の常だという理屈だ。

   昔は、長男に一郎、次男は次郎(二郎)...と、順番に漢数字を冠した名前を付けていったケースがよくあった。先述した「長男長女理論」に基づくと、「一郎丸」、「次郎(二郎)丸」...は確認しやすいものの「八郎丸」、「九郎丸」となると、その実在数が減っていく。そのため森岡氏は「八郎丸だけ確認できていない」という結論に達したようである。

綾瀬はるかさんの本名が珍しかった

   有名人の名前として、森岡氏はこんな珍名を挙げた。

・漫才コンビ「雨上がり決死隊」の蛍原(ほとはら)徹さん
・女優「綾瀬はるか」さんの本名=蓼丸(たでまる)綾さん
・漫才コンビ「銀シャリ」の鰻(うなぎ)和弘さん
・女優の本仮屋(もとかりや)ユイカさん
「まず『蛍原』姓は、ものすごくレアで、蛍原徹さん以外、蛍原という名字を見たことがまったくないんですよ。あとは、綾瀬はるかさんの本名『蓼丸』さん。彼女は広島県出身だと聞いていますが、おそらく広島県内でも1軒か、2軒程度でしょう。鰻姓は全国で10軒、本仮屋姓も全国で30軒程度かと考えられます」

   珍名の話ばかりしてきたが、日本人の名字には「オーソドックス」とも言える名字が山ほどある。同氏の調査研究によると、

・1位=佐藤(約200万)
・2位=鈴木(約175万)
・3位=高橋(約145万)
・4位=田中(約135万)
・5位=渡辺、渡邊(約115万)
・6位=伊藤(約110万)
・7位=山本(約109万)
・8位=中村(約107万)
・9位=小林(約104万)
・10位=加藤(約87万)

ということだ。因みに、記者の本名は山田だが、同氏統計の全国順位では12位だそうだ。

   さて、こうした「メジャー」な姓が珍しい姓を飲みこんでいったら――例えば佐藤さん(男性)が本仮屋さん(女性)と結婚し、本仮屋さんが佐藤姓を名乗るようになれば、本仮屋姓が1人減る――日本人の名字はメジャー姓に集約されていき、珍しい姓が減っていく一方にも思える。だが森岡氏によると「そうでもないんです」。

「例えばサッカーの元日本代表『ラモス瑠偉』さん、『呂比須ワグナー』さん、大相撲・元横綱の『曙太郎』さん、『武蔵丸光洋』さん、ラグビー日本代表主将の『リーチマイケル』選手...。日本国籍を取得している外国の方が増えているのも実情です。日本人の名字は約18万あるとも言われています。対する隣国の韓国では、約300ほどだそうです。日本人の名字が、いかに面白いか、ご理解いただける数字ではないでしょうか?」

   全国12位の山田...、意外とメジャーな名字だったりする。

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