小室圭さんの文書 能町みね子さんは言葉尻にこだわり「失敗」の宣告

   週刊文春(2月7日号)の「言葉尻とらえ隊」で、コラムニストの能町みね子さんが小室圭さんを俎上に載せている。秋篠宮家の長女、眞子さまと「婚約会見」をしたものの、母親の元婚約者に金銭トラブルがあると暴露されて立ち往生している男性だ。そのあたりを世間に釈明する文書が、能町さんの目に留まった。レーダーに捕捉されたという感じか。

   能町さんのコラムは、著名人の発言に見え隠れする「本質」を、その言葉尻からすくい取る趣向で、この回が338回目。消しゴム版画と鋭い風刺で一世を風靡したナンシー関(1962-2002)を彷彿とさせる筆致が評価されたか、長期連載となっている。

「小室圭一家の結婚問題や借金問題、本人から直接文書が発表されたとなれば黙っていられない。プロの手を経ない、本人が書いた文章は私の大好物です。分析したい」

   冒頭からテンションが高い。

「まず気になるのは登場人物である『元婚約者の方』です。人物名で6文字。外国人名ならともかく、ほぼ漢字で6文字は長いです。この文字列がなんと20回も出てきます」

   ちなみに「私」と「母」はそれぞれ15回と17回だという。全部数えたんだ。

「元婚約者の方」は6文字×20回なので、それだけで120字...「1500字弱の文章の1割弱を『元婚約者の方』という文字に費やしていることになります...『元婚約者の方』なるまどろっこしく怪しげな名前の人物がずっと歯に挟まったような気分になる文章です」
小室圭さんの文書
Read more...

一度だけ使った「...のです」

   能町さんの結論は、小室さんの文章は失敗しているというものだ。怪しげな語感の「元婚約者の方」を連発したことだけではない。「もっと大きな面で失敗しているのは、全体から匂ってくる『元婚約者の方』を説き伏せたいという空気感です」

   小室さんは、元婚約者が提供したという約400万円について感謝しつつ、それは借金ではなく頂いたものだと主張したうえ、婚約解消についての説明不足にも不満をにじませる。

「つまり、こちらの正しさを分かってほしい、という結論でまとめています。これは相手の神経を逆なでするでしょう」

   小室文書で能町さんが「いちばん好き」というのは、「元婚約者の方から『返してもらうつもりはなかった』という明確なご説明がありました...金銭的な問題はすべて解決済みであることを二人は確認したのです」という部分だ。

「終始ドライな文面の中で、一度だけ登場する『のです』。やや感情的な、念押しの文尾。いいですか皆さん、二人は確認したのですよ!...と」

   ここだけ力が入るのはかえって怪しくないか、ということだろうか。

「私も念押しの用法で『のです』を使いがちなので、ちょっと親近感が湧きました。解決するといいですね」

ネタへの配慮と読者サービス

   私の連載も「コラム尻とらえ隊」みたいなコンセプトなので大きなことは...いや、むしろ言えると思うのだが、よそ様の文章を引用しての論評は、まさに全人格を問われる行為である。曲解や誤解をできる限り排し、意のあるところを正確にくみ取り、筆者に誠心誠意寄り添い、かつ面白い読み物に仕立てなければならない。

   能町さんも心得たもので、小室さんをネタにしながらも慎重に書き進めているのが分かる。コラムの素材である小室文書については大意「弁護士の助言を加味した文面かもしれないが、おおむね本人が書いたものとして扱わせてもらう」との「お断り」つきである。

   「元婚約者の方」を「A氏」などにできなかったのかという疑問にも、「犯罪者みたいでイメージが悪い。ほかの呼び方もないので不運といえば不運」と自答している。

   そうした配慮をしたうえで、強欲な読者を満足させるのが風刺のプロであろう。私はプロらしい強烈なサービス精神と技術を、コラム本文とは別のところで見つけた。

   能町コラムは絵心のある筆者自身の挿絵も名物だ。今回は、NYでわが道を行く小室さんの絵に、「この人自身が『元婚約者の方』であるように思えてしまう...」のコメントが添えてある。こんな「優しげな意地悪」こそがプロの案配だと思う、のです。

冨永 格

注目情報

PR
追悼