【2018年トレンド総決算:カープ・新井貴浩引退】そっくりさん「新丼貴浩」から贈る言葉

   広島東洋カープファンが集う居酒屋「広島お好み焼Big-Pig神田カープ本店」(東京都千代田区)。扉を開けると、ひとりの大柄な男性が記者を待っていた。カープの「25番」のユニホーム。今季で現役を引退した......え、まさか、本物?

「どうも初めまして、新丼(あらどん)です」

   丁寧に名刺を差し出すこの人物――。カープの新井貴浩さんと同じ身長189センチ、体重102キロのそっくりさん、「等身大ベースボールプレイヤー」を名乗る新丼貴浩さんだ。

新丼(あらどん)貴浩さん
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新井さん本人から「似てますね、ほんとに」

   ベテランになっても、1塁ベースまで全力疾走。新丼さんは、どんなことにも一生懸命な新井さんが大好きだ。チームのリーグ3連覇に貢献しつつも今シーズンで20年の選手生活に終止符を打った。引退発表時はショックを受けたものの、「会見での言葉に人柄が出ていた」と話した。

「これからのカープのことを考えたときに、今年(引退するの)がいいんじゃないかと考えました」

   引退会見で新井さんが語った言葉だ。新丼さんは、「ベンチ入り人数に制限がなかったら引退していなかったのではないか」と考えた。だが、「カープのため」もっといえば「野球界のため」ならば、個人を犠牲にするだろう新井さんらしい決断だと受け止めた。

   実は本人との対面は、1度しかない。2016年12月、東京・表参道で新井さん、カープOBの山本浩二さん、野村謙二郎さんのトークショーが行われた際だ。3人と握手できる抽選に当たった。整理番号は50人中7番、前方で順番を待っていた。

   トークショーの冒頭で、山本さんは「東京にこんなにカープファンいたんやね~」と観客を見渡し、新丼さんの姿を発見すると「あ!新井にそっくり!」と驚いた。すぐに隣の本物の新井さんを見て「違うか」とつぶやくも、もう一度新丼さんを見て「似てるよ~!」と言い直した。新井さんも「似てますね、ほんとに」と笑顔だった。

   本来は握手だけだが、特別にツーショット写真も撮ってくれたという。時間の関係で会話はできなかったが、「大興奮でした」とうれしそうだった。

新丼貴浩さんって何者?

   実は新丼さんは幼少期から新井さんやカープのファンだったわけではない。物心ついた頃から野球に取り組みプロ野球にも多少の興味はあったが、野球は見る よりプレーしたいタイプで、新井さんは有名なプロ野球選手のひとりとしか見ていなかった。

   「転機」が訪れたのは、2016年10月22日。カープと北海道日本ハムファイターズが戦った日本シリーズの初戦、今回インタビューをした居酒屋「広島お好み焼Big-Pig神田カープ本店」を訪れたことだ。この日、「サンデー・ジャポン」(TBS系)などのテレビ番組が関東のカープファンの盛り上がりを取材するため、同店で撮影中だった。そこでユニホーム姿の新丼さんが「発見」されたのである。

   新丼さんがこの店を訪れたのは、偶然ではない。元読売ジャイアンツ・桑田真澄さんのそっくりさん「桑田ます似」さんから、オファーを受けたためだ。2人は半年ほど前に草野球を通して知り合っていた。

   ます似さんからは「身長体重が同じ等身大モノマネは滅多にいない。(そっくりさんの活動を)続けたほうがいい」と勧められ、「新丼貴浩」と名付けてもらった。翌日のサンジャポのオンエアが重なって、インターネットで話題になった。

   そっくりさんとして注目を集める中で、新井さん本人やカープについてこれまで以上に興味を持つようになり、そのプレースタイルや人柄を知れば知るほど、好きになっていったという。現在は「1日の半分は新井さんやカープのことを考えている」ほどだ。

   最後に新丼さんに、引退した新井さんへ贈りたい言葉を聞いた。それまではじょう舌だったが、この質問だけは途中、言葉に詰まりながらしんみりとこう語った。

「まずはお疲れ様という気持ちです。"ありがとうございました"というのも変だし、簡単にまとめられないですが...。来年も新井さんのユニホーム姿が見られると思っていたファンがほとんどの中で、未来のカープのことを考えて、自ら身を引かれるご判断に、やはり素晴らしいお人なんだなと思いました。正直新井さんがいないカープは想像できないんですが、『もし来年カープが壁にぶち当たることがあったら、すぐにユニホームに着替えてカープに戻ってきてください』と言いたいですね。道具がなかったら僕がすぐ貸しにいきますから」

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