「イッテQ!」だけではない 「やらせ・捏造」はなぜ繰り返されるのか
日本テレビのバラエティー番組「世界の果てまでイッテQ!」に「でっち上げ」疑惑があると報じられ、社長が謝罪する事態となった。テレビの「やらせ・捏造」問題は、これが初めてではない。なぜ、繰り返されるのか、背景に何があるのか。今回は現場の立場からテレビの実態を明らかにし、構造的な問題点を解き明かす。
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生々しい現場の実態を明らかに
「そもそも本来テレビ報道は、われわれの知る権利に応えるジャーナリズムの一翼を担っている。にもかかわらず、今やその機能がどんどん衰えている」――『内側から見たテレビ やらせ・捏造・情報操作の構造』(著・水島宏明、朝日新聞出版、821円)は、そう訴え、テレビに騙されないための知識を伝授する。
著者は札幌テレビに就職、記者やドキュメンタリーを制作、海外特派員も歴任。日本テレビへ転籍後は情報番組の解説キャスターも経験した。ドキュメンタリー「ネットカフェ難民 ~漂流する貧困者たち」で2007年度芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞している。そんな体験から「テレビで働く人々がなぜ捏造やミスをしてしまうのか、どんな事情があるのか」と現場の生々しい実態を明らかにし、テレビの見方を示す。
目次は「なぜ報道は大切なことを伝えないのか」「テレビ局が陥ったやらせ・捏造の内幕」「テレビは権力の監視を果たせているのか」「テレビの希望はどこにある?」など6章。
「優しいお父さん・池上彰」がホンネを展開
『池上彰・森達也のこれだけは知っておきたいマスコミの大問題』(著・池上彰・森達也、現代書館、1512円)は、テレビでお馴染みのジャーリストの池上彰氏と映画監督・作家の森達也氏がこれからのメディアのあり方について存分に語り合う。
「中立的な優しいお父さん」のイメージの池上氏に森氏が次々に批判をぶつけ、池上氏はこれまでテレビでは封印していた持論やホンネを惜しみなく展開。政府から圧力を受けた際の対応なども取り上げる。
内容は「メディアを知る」「メディアの『力』」「メディア・リテラシーの想像力」を3項目に「加害性と匿名性」「マスコミと『国益』という言葉」「『朝日問題』とは何だったのか」「メディアの謝罪」「メディアとのつき合い方」など具体的なテーマが並ぶ。
知識人とマスメディアに疑いの目を
『メディア・コントロール ―正義なき民主主義と国際社会』(著・ノーム・チョムスキー、集英社、734円)は、米国の軍事行動を批判し続けてきた知識人・チョムスキー氏が現代情報社会の鍵であるメディアの虚実を暴く。
「20世紀の初めから、支配層は大衆の目から真実を隠す手法を巧妙に構築してきた。米国の外交、テロや戦争の実態など世界の真の姿を知るためには、それに気づかなければならない」――作家・辺見庸氏とのロング・インタビューも収録し、チョムスキー氏の考え方のエッセンスを伝える。
目次は「火星から来たジャーナリスト」「インタビュー 根源的な反戦・平和を語る(聞き手・辺見庸)「知識人とマスメディアに疑いの目を」など。