奇書「針聞書」刊行から450年、鍼の聖地・茨木で日本伝統鍼灸学会、ハラノムシは這い出るか?

   奇書として知られる「針聞書」編纂450年を記念して、第46回日本伝統鍼灸学会学術大会が2018年11月24日と25日の両日、立命館大学大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)で開催される。

奇書に描かれたハラノムシ
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人間の臓器、体内に棲息する虫をユーモラスに描いた図鑑

   1568年、織田信長が上洛を果たしたころ、京都に近い茨木地方(現在の大阪府茨木市)の鍼(ハリ)治療の名医、茨木元行(いばらき・げんぎょう)が「針聞書(はりききがき)」なる鍼治療に関する口伝集を刊行した。人間の臓器、体内に棲息する虫を、実にユーモラスに描いた図鑑。その虫たちが約400年の眠りから覚めたのは2002年、この本が鍼灸師で森ノ宮医療大学院教授の長野仁氏によって発見されたからだ。

   以来、茨木は「鍼の聖地」と呼ばれ、ハラノムシたちにあやかったさまざまなイベントが催されてきた。2018年11月24、25両日開かれる第46回日本伝統鍼灸学会学術大会は「針聞書」編纂450年を記念した大会として、会場を聖地茨木の立命館大学大阪いばらきキャンパスを選んだ。大会実行委員長はハラノムシを眠りから起こした本の発見者、長野仁氏である。学会としての研究発表、シンポジウムのほか、茨木市が後援する市民講座も企画した。著名な学者による日本の妖怪文化、日本人の心性と腹の虫、気口九道の講演やシンポジウムがある。会場には、絵本作家の茂利勝彦氏がハラノムシを描いた現代版の原画が展示される。

「日本人は昔から虫に親近感を抱いてきた」

   「針聞書」は九州国立博物館に収蔵され、同館の人気展示物となっている。この書を題材とした書籍は「虫の知らせ」(ジェイ・キャスト)、「戦国時代のハラノムシ」(図書刊行会)などが出版され、ロングセラーとなっている。注文印刷の「針聞書」完全復刻版は32万4000円と高価である。

   日本語には他の言語に比べて虫のつく言葉が多いという。同志社大学名誉教授の故笠井昌昭氏は「日本人は昔から虫に親近感を抱いてきた」と言っている。古くから中国の知識を借りて、体の中にいろいろな虫がいると考えてきた。しかし、「針書書」に現れる63種類もの虫のリアルで滑稽な姿を見て笠井氏は驚いた。それだけの奇書だという。

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